学校であった怖い話
>六話目(荒井昭二)
>A4

彼は幻を見たと思うんですね?
はたから見れば、彼はおかしくなってしまったのかと思って当然です。
実際、その人形も選ばれた人しか見れませんしね。

でも、霊感の強い人などはその人形の気配や怪しい雰囲気は感じ取ることができるそうです。
僕も、その人形じゃないですけど見たことがありますよ。
人形の幻を……。

僕がまだ小さい頃、おもちゃ箱に自分で持っているはずのない人形が入っていたんです。
ネジ巻き式の、ブリキの赤ちゃん人形なんですがね。
笑うんですよ。
ジージーとネジ巻きの音を響かせながらね。

僕は子供心に気持ち悪がって、母親にその人形を取り除いてくれと頼んだんです。

しかし、母親がおもちゃ箱を見ると、その人形はどこにもなかったっていうことがありました。
情緒不安定だったんですかねぇ。

で、金井君の見たものは、僕が見たような幻じゃないんですよ。
当人の周りにいたら、絶対に幻なんかじゃないって実感するはずです。

金井君が二度目にその人形を見たのは、二日後のことでした。

体育の授業で、ソフトボールをやっていたとき、突然金井君が暴れだしたんですよ。
バットを振り回しながら、グラウンドを走り回ったんです。
「寄るな! 寄るんじゃない!」

その場にいた全員の動きが止まりましたよ。
だって、見ていた僕たちのほうが危なかったんですからね。
存在しない何かを見るような目でバットを振り回すんです。

その時、何人かが噂しているのを聞きました。
それで僕も、この学校にまつわる人形の話を知ったんですけどね。
体育の先生は、一瞬止めるのをためらっていました。
その時の先生の哀れむような表情を今も覚えています。

……でも、不思議に思いませんか?
うちの学校にはそういった呪われた人形がいるのに、どうしてみんなやめないんでしょうか?

知らずに入ってくる生徒は仕方ないとしても、先生やその現実を見てしまった生徒たちは、どうしてやめないんでしょうかねえ?
不思議に思いませんか?
1.不思議に思う
2.別に思わない