学校であった怖い話
>六話目(荒井昭二)
>H4

……そうですか。それは、いい判断だと思いますよ。
今こうしているうちにも、その人形が忍び寄っていないとはいえませんからね。
……いや、もしかしたら僕たちのうちの誰かはもうその人形を見てしまっているかもしれない。

余談ですが、人間は幻覚を見ることが実際によくあるそうですよ。
例えば、幽霊の類いですが、そのほとんどは幻覚だといいますね。

もちろん、本物の霊も存在しますけれど、ほとんどの場合は幻覚だそうですよ。
疲れているときとか、精神が不安定なときは、そういうものを見てしまうそうです。

その時、人形を見てしまうケースは特に多いんですってね。
実は、僕も見たことがありまして……。
いえ、例の人形じゃありませんよ。
だって、僕がこの高校に入る前の出来事ですから。

誰もいないはずの部屋に、日本人形が転がっているんですよ。
髪の長い稚児人形がね。
瞬きした次の瞬間にはいなくなっていましたけど。
まあ、それはどうでもいいことですね。

……それで、金井君の話です。
金井君が二度目にその人形を見たのは、二日後のことでした。

体育の授業で、ソフトボールをやっていたとき、突然金井君が暴れだしたんですよ。
バットを振り回しながら、グラウンドを走り回ったんです。
「寄るな! 寄るんじゃない!」

その場にいた全員の動きが止まりましたよ。
だって、見ていた僕たちのほうが危なかったんですからね。
存在しない何かを見るような目でバットを振り回すんです。

その時、何人かが噂しているのを聞きました。
それで僕も、この学校にまつわる人形の話を知ったんですけどね。
体育の先生は、一瞬止めるのをためらっていました。
その時の先生の哀れむような表情を今も覚えています。

……でも、不思議に思いませんか?
うちの学校にはそういった呪われた人形がいるのに、どうしてみんなやめないんでしょうか?

知らずに入ってくる生徒は仕方ないとしても、先生やその現実を見てしまった生徒たちは、どうしてやめないんでしょうかねえ?
不思議に思いませんか?
1.不思議に思う
2.別に思わない