学校であった怖い話
>六話目(細田友晴)
>AN7

僕は左に行ってみることにした。
トイレはすぐに見つかった。
急いで中に入る。
そこで僕は、信じられないものを見た。

壁にはめ込まれた、いくつものドクロ。
うなじの毛が逆立った。
……でも、すぐに僕は、勘違いに気づいた。
ドクロなんかじゃない。
あれは壁の染みだ。
人の顔のような形をしている。

だけど、いくつもある染みが、みんな同じ形をしているなんて。
奇妙な感じがする。
僕は近づいて、染みをよく見てみた。
……一瞬、染みが動いた気がした。
びっくりして、もっと顔を近づけてみる。
「……何をしているんだい?」

いつの間にか、細田さんが立っていた。
「いえ、あの……今、染みが動いたような気がして」
いいながら、急に恥ずかしい気持ちがこみ上げてきた。
染みが動くだなんて。

おびえた子供が、揺れるカーテンを見て幽霊だと思い込むようなものだ。
怖い怖いと思っているから、あんな幻覚を見てしまったんだ。
「……なんでもないです」
「そうかい? じゃあ、戻ろうよ」
僕はうなずいて、細田さんといっしょに元の教室に帰った。

そして、再び話の続きが始まった。

それで、補習で残された六人だけれど、いつまでたっても担当の先生が見に来ないから、だんだんと不安になってきてね。
でも大事な期末テストの補習だったから、これを落とすわけにはいかない。
それぞれ六人ともそれなりの事情があってね。

これを落とすとクラブ活動ができなくなるとか、親が呼び出されるとかね。
だから、帰るに帰れなかった。
ふと、時計を見るともう九時を回っていたんだよ。
でも、それがそもそも不思議なことだと思うんだ。

どうして九時まで気がつかなかったのか。
いくら集中して補習に取り組んでいたとしても、もともと補習を受けるような連中だよ。
そんなに集中力が続くんだろうか?

九時を過ぎるまで気がつかないなんて、異常だとは思わないかい?
1.異常だと思う
2.別に思わない