学校であった怖い話
>六話目(岩下明美)
>A6

「わかりました。お願いします……」
岡崎さんの親は、そう答えたわ。
そして、近い内に墓からルーベライズを取っておくから、連絡先を教えてほしいといったの。
大川さんは、大喜びで自分の住所や電話番号を教えたわ。
そして、三日ほど後……。

大川さんの家に、電話がかかってきたの。
「大川さんですか?
……岡崎幸枝の父です。
先日は、ありがとうございました。
ルーベライズは、確かに呪われていますね。

あれから、墓を掘り起こしたんですが……。
作業にあたった人が、掘り起こした穴に足を滑らせましてね。
頭を打って、亡くなってしまったんですよ。

……大川さん。
ルーベライズは、すぐにそちらにお送りしました。
どうか、供養をお願いします……」
その時、玄関からチャイムの音が聞こえてきたわ。

ここでちょっと、岡崎幸枝さんの話をしましょうか。
彼女は、ごく平凡な家庭の少女だった。
だけど、さる財閥の御曹司から、ルーベライズをもらったそうよ。
当時の値段でも家が一件買えるほどだったっていうから、私達の常識からは、かけ離れたプレゼントだったわけよね。

財閥の彼は、藤臣秀人という名前だったの。
藤臣君は、岡崎さんにずっと片思いをしていてね。
ルーベライズを送って、付き合って下さいと告白したそうよ。
岡崎さんはとてもきれいな子でね。
アイドルとしても通用しそうな、個性的なかわいらしさをもっていたの。

彼女のクラスメートは、みんな羨ましがったわ。
当時は、まだルーベライズが幸せを呼ぶ石だってことを、まだ誰も気にしていなかったけれど。

世界的にみても珍しい石だってことで、学校でも話題になったらしいわ。
それで、大川さんに、彼女のことを話した女の子たちも、どこかからその噂を聞いたんでしょうね。

藤臣君は、ルーベライズをペンダントにして岡崎さんに渡したわ。
そして、こういったの。
ルーベライズは、幸せを呼ぶ石なんだって。
これは、願いをなんでも叶えてくれるんだって。
それから、このことは二人だけの秘密だよと……。

岡崎さんは、思ったわ。
彼は単に、おまじない程度の意味で、そういったのだろうと。
すると、藤臣君は……。
じっと彼女を見つめ、こんなことをいったの。
「ルーベライズの力を、試してみない……?」

彼女は、彼の目があまりに真剣だったから、一瞬息を飲んだわ。
でも藤臣君は、そんな彼女の手を握り、こう続けたの。
「今日、英語のテストがあるよね。
ルーベライズを握って、おまじないをしてみなよ。
いい点が、とれるようにって」

彼は、優しく微笑んだわ。
それを見て岡崎さんは緊張が解けてね。
試してみるわと、軽く返事をしたの。

そして、授業二時間目。
英語のテストが行われたわ。
答案用紙が配られ、岡崎さんは息をつめた。
「あっ……!」
彼女の答案用紙からは、うっすらと答えが浮かび上がっていたの。
<こ、これは……?>
彼女は驚いたわ。
それが、ルーベライズの力だと思いつくのに、そう時間はかからなかった。
「どうだった? テストは」
テスト終了後、すぐさま藤臣君が話しかけてきたわ。
岡崎さんは、震えるくちびるで、彼に答えたの。

「本当に、効果があったわ……」
彼女の様子をみて、藤臣さんは満足そうに微笑んだ。
そして、ゆっくりとうなずいたの。
「そうか。やっぱり、この石は……」
二人は、向き合って黙り込んだわ。

そして、しばらく後に藤臣君は、こんなことをいったの。
「岡崎さん、もう一度効果を試してみない?」
彼女に、反対する理由はなかったわ。
……そして翌日。

藤臣君の提案で、天気を変えてほしいと祈ることになったの。
「まさか、そんなことまでは叶わないんじゃない?」
そんなことをいいながらも、彼女の心はウキウキしていたわ。

岡崎さんは、よく晴れたお昼休み、屋上でルーベライズを握り締め祈ったの。
「今日の天気を、変えてください……」
すると、いきなり空が光ってね。
かみなりが落ちたのよ。
「き、きゃーーーっ!!」
岡崎さんは、驚いで手すりにぶつかったわ。

「痛っ!」
藤臣君もびっくりしちゃってね。
二人は、しばらく近付きあってガタカタと震えていた。
「ふ、藤臣君……」
岡崎さんは、泣きそうな目をして彼を見たわ。

……彼の顔は、笑っていた。
「藤……臣君……?」
彼女はなんだか恐ろしくなったわ。
彼の笑いは、不気味に歪んでいたんだもの……。
「岡崎さん……」

藤臣君が、ゆっくりと口を開いたわ。
そして、こういったの。
「お願いがあるんだけど……」
彼のお願いは、どんなことだったと思う?
1.実は殺したい人がいる
2.もう一つ試したいことがある