学校であった怖い話
>六話目(岩下明美)
>J8

<お母様!!>
彼女は、必死で低い声の女性に呼びかけたわ。
すると……。
「幸枝……私は、あなたのお母様なんかじゃないわ。
そんなことは、一言もいってないでしょう?」
そんな返事が返ってきたの。

<しまった!!>
岡崎さんはとっさにそう感じたわ。
このまま、低い声の女性に取り殺されるような予感がしたのね。
「幸枝!! 私の所に来るのよ!!」
女性の澄んだ声が聞こえたわ。
岡崎さんは、もう迷ってはいられなかった。
息をつめて一気に立ち上がろうとしたの。

「か……身体が動く!!」
同時に、声も出るようになっていたわ。
「お母様!!」
岡崎さんは、澄んだ声がする方向に走りこんだ。
「幸枝!! 忠告したのに!! その女は……」
低い女声。
そして……。

「きゃあああーーーーっ!!」
そこにあったのは、制服を着たミイラ。
ミイラは、皮膚がこびりついた骨の手で、岡崎さんの腕を強くつかんだ。
そして、美しく澄んだ声で、こう語りかけたの。

「だまされたわね。
私は、あんたのお母様なんかじゃないよ。
あんたは、ルーベライズをもっていたんだろう?
だったら、お母様に会いたいって願えばよかったじゃないか。
ふふふ………」

<お……お母様!!>
岡崎さんは、必死で祈ったわ。
もし、お母様がどこかにいるのなら……
心で懸命に話しかければ、来てくれるかもしれないと思ってね。
でも……。

彼女のお母様の霊が、助けてくれることはなかったの。
だって、彼女のお母様は生きていたんだもの。
お父様とは絶縁していたけれど、ちゃんとどこかで生活していたんだもの。

うふふ……。
岡崎さんは、オルガンを弾いていた女生徒の霊に連れて行かれたわ。
魂を、抜き取られたの。
女生徒の霊は、オルガンに取り付いた地縛霊だったそうよ。

知ってる?
長い間使われていない楽器には、霊が取り付きやすいんですって。
岡崎さんは、たまたま霊につけいられたにすぎないわ。
今となっては、彼女に忠告したあの声の正体はわからないわね。
まあ、私には大体、想像できるけれど。
うふふ……。

……坂上君。
岡崎さんのこと、かわいそうだと思う? ルーベライズなんて、悪魔のような石だと思う?
……でも、彼女はルーベライズから幸せを与えられていた時があったのよ。
地縛霊が弾くオルガンの音色は、彼女を確かに幸せな気分にさせていたんだもの……。

……どう?
ルーベライズの力がわかったかしら。
1.わかった
2.信じられない