学校であった怖い話
>六話目(福沢玲子)
>I5

あ、そう。
次に大事なのは家事全般なんだね。
やっぱりさあ、奥さんは料理とか洗たくができた方がいい?
おいしい食事作ってくれて、家がいつもきれいに掃除されてて、ピッカピカのほうがいい?

でもさ、そういうのってよくないよ。
亭主関白だよ。
今時、そんなの流行んないよ。
今はね、男のほうが料理したり、掃除したりするほうが流行ってんだから。

あんまりわがままいってないで料理ぐらい作れないとね、もらいてなくなっちゃうよ。
ま、でも性格のほうが大事なんだものね。
家事なんかたいしてできなくても許せちゃうよね。
……ということは、やっぱりルックスはどうでもいいんだ。

性格がよくて、料理がうまくて掃除好きで洗たくしてくれて、それだったら顔なんか悪くたって、申し分ないよね。
何となく、坂上君のことがわかってきた。
……でもさ、本当はルックスもよくなくちゃ嫌でしょ?

何だかんだいって、顔もスタイルも並み以上のものは求めてるんでしょ?
いいって、いいって、隠さなくっても。
男なんて、みんなそんなもんなんだからさ。

理想は高いぐらいがちょうどいいんだから。
よく、どんな人でもいいとかいってる人がいるけれど、そういう人に限って、ものすごく理想が高かったりするんだから。
坂上君なんて、かわいいものよ。
特に、あの平井さんに比べたらね。

私もさあ、平井さんの話を聞いたときは本当にびっくりしたよ。
何てったって、相手の名前から年齢まで決まっているんだもん。
そんなのってある?
すごいんだよ。

名前でしょ。
誕生日でしょ。
血液型でしょ。
出身地でしょ。
そういうこだわり方をしたのよね。
性格とかルックスよりも、そういうものを最優先したの。

変なこだわり方だよね。
それにさ、そんな相手なんて、そう簡単に会えるもんじゃないでしょ。
でもね、平井さんは絶対に会えるって信じてたの。
そして、その相手と二十歳になるまでに結婚できるって信じてたの。

いったい、何の根拠があるのか、私にはさっぱりわからないわよ。
でもね、占いでそうなってるんだって。
平井さんは、そういう星のもとに生まれたんだってさ。
何でも、ものすごく有名な占いの先生に、小学生のときにそういわれたっていうじゃない。

いうほうも、いうほうよね。
私も占いは好きだけど、あんまり信じないもん。
半分は遊びだと思ってるしぃ。
でもさ、小学生のときの占いを、高校生になるまで信じて、その相手を捜し続けるって、すごくロマンチックよね。

なんか怖いけど、やっぱりロマンチックじゃん。
そう思うよ。
だって私はそこまでできないもん。
当然、そういう人なんて見つからなかったわけで、それで高校生になっても捜してたの。
すごかったってよ。

平井さんが入学してきたとき、同級生から先輩まで、みんなの名前を調べたんだって。
名字が同じ人とか、呼び方は同じなんだけど字が違う人とかは何人もいたらしいよ。
そりゃあ、学校の大きさが大きさだものね。

でもさ、名前があってても、そのあとに血液型やら誕生日やらあるじゃない。
絶対に見つかるわけないって。
事情を知っている友達は、みんな笑ってたらしいよ。
でも、平井さんには鬼気迫るものがあって、誰も口に出してはいわなかったらしいけど。

学園祭のときなんかすごかったらしいよ。
遊びにきた他校の男子生徒に、手当たりしだいに名前を聞きまくっていたっていうんだから。
おもしろがって冗談をいう人もいたらしいんだけど、あとでそれがばれてね。

その人、平井さんに殺されそうになったんだって。
大変な騒ぎだったらしいよ。
怖いよねえ。

それでも、平井さんがあきらめるわけないじゃない。
平井さんは、ずーっと捜し続けたの。
でもさ、期限は二十歳まででしょ。
二十歳までに運命の人と結婚しなくちゃ、幸せになれない。
それどころか自分は死んでしまうとまで思ってたんだってさ。

そんなことあるわけないのにさあ。
でも、本人はそう信じ込んじゃってるわけでしょ。
だから、もう必死よ。
たぶん、高校を卒業しても見つからなかったら、全国に募集をかけたかもしれないよね。

そうすれば、一人ぐらいいるかもしれないじゃん。
もしくは、無理やり名前を変えさせたりしてね。
あはははは……。
でもさ、平井さんが高校三年になったとき、現れたのよ。
その運命の人が。

しかも、学校に。
そうなると、占いっていうのも馬鹿にできないよね。
何か、本当に運命的な出会いを感じちゃうもの。

ねえねえ、その平井さんの条件にぴったりあてはまる人って、どんな形で現れたと思う?
1.新任の先生
2.転校生
3.新入生