学校であった怖い話
＞六話目（福沢玲子）
＞U5

ふうん。
次が、性格ね。
じゃあ、顔はどうでもいいの？
……冗談よ。
そんなこといっても、顔だって重要でしょ。
そう、思っているよね？

……まあいいや。
みんな、それぞれいろんな好みがあるわよね。
でも、平井さんの理想って、本当に特殊だったんだよ。
教えたげよっか。
平井さんの理想っていうのはね……。

彼女の、お兄さんのような人だったの。
そのお兄さんっていうのは、すごくかっこよかったそうよ。

頼りがいがあるっていうのかなあ、生徒会長とかやってた人でね。
頭もよかったし、性格もよかったんだって。
欠点といえば、妹に甘いことぐらい。
そういう人だったの。

平井さんが、お兄さんになついちゃうのもわかるわよね。
自慢のお兄さんだったんだもん。
で、平井さんはすごく美人だったんだけど……。
性格には、ちょっと問題があったの。
彼女、ルックスは本当によかったんだけどね。

美人だし、スタイルもよかったし。
ナンパされまくりだったし。
よく、モデルとかにスカウトされていたしね。
でも、性格がね……。
すごく悪い人、ってほどじゃなかったみたいなんだけど。

……彼女は、すごく嘘つきだったのよ。
平井さんは占いにはまっていてね。
その結果を、よくみんなにいいふらしていたの。
彼氏ができるって占いがでれば、今度彼をみんなに紹介するっていうし。

金銭運がいいって出れば、今度おごってあげるなんていって、そのうち忘れちゃうし。
ちょっと問題がある子だったのよ。
彼女がそういうことをいっていたのは、占いの結果を本当に信じていたからなんだけどね。
みんなからみれば、ただのウソつきだったってわけ。

でも、平井さんは何で当たらない占いを信じていたのかしら、って思わない？
彼女にいわせると、占いは何回かするうちに当たることがあれば、それでいいんだって。
すべての運命をわかってしまうと、かえってまずいこともあるから、全部は当たらないようになっているんだって。

でも、もちろん当たることもあるから、占いの結果はなるべく信じて、その上でみんなに伝えておきたいんだって。
すごい性格だよね。
でもさ、彼女はすごくきれいだったから。
男子にはそれなりに人気があったのよね。

平井さんがいうと、嘘もなんか許せちゃうっていうか。
平井さんって、どこか憎めないところがあったからね。
彼女、生意気じゃなかったのよ。
嘘ついても、後で責められるとすぐ謝っちゃうわけ。
ごめんなさいってね。

で、彼女のきれいな目でうるうると見つめられちゃうとね、なんだか怒れなくなっちゃうんだって。
そういう人、得だよねえ。
でもね、こんな噂もあったのよ。

平井さんのお兄さんの手には、ナイフで切ったような傷あとが残っていてね。
それは、妹とケンカした時についたものだって話。
もちろん、噂よ。
詳しい話は知んないけどさ。

それでね、坂上くん。
さっき、平井さんは結婚願望が強かったっていったでしょ。
でも、なんていうのかな……。
本気で主婦になりたいってわけじゃなかったみたいなの。
彼女、あんまり現実をみない性格だったのよね。

お兄さんがすてきなら後を追う、女の子だから結婚が夢、みたいな。
単純っていうか。
要するに子供だったんだよね。
それで、みんないっていたんだって。
彼女、本当に結婚なんてできるのかしらってね。

そしたら……。
ある日、彼女の占いで、近い内に運命の人にめぐり会えるっていう結果が出たのよ。
彼女は、どうしたと思う？
もちろん、それを信じて、いろいろな人にいいふらしたのよ。

そうしたら……。
今度は、それが実現しちゃったわけ。
彼女は、出会ってしまったのよ。
理想の相手にね。
それは、文化祭の日だった。

彼女が受けつけをしていた料理クラブの教室に、三年生の男の子が入ってきてね。
クラブの催し物について、二、三質問してきたんだって。
彼の名前は、鈴木君っていったんだけど。
平井さんは、彼のことがすごく気になってしまったの。

鈴木君は、どことなく彼女のお兄さんに似ていたそうよ。
文化祭の時って、それぞれの教室にノートが置いてあるでしょ。
それで、見に来た人が名前を書くのよね。

平井さんは、そのノートに書いてあった鈴木君の名前やクラスを控えておいたわ。
そして、彼のことを遠くから見つめるようになったの。

鈴木君は、サッカー部でね。
平井さんは、彼の練習風景をよく見にいっていたみたい。
彼は、かっこよくて、頼りがいがあって、頭もよかったし、性格もよかった……。

それで平井さんは、彼のことをすぐ好きになっちゃったらしいの。
なんだか、笑っちゃう話よね。
でも、そういう恋愛って、女の子の思い込みによるところが大きいと思うな。

かんちがいってやつ？
ちょっと顔がよくてハキハキしているだけで、すてきな人だわ、頭もよさそうだし、性格もマルね……なんていって、どんどんあこがれの対象にしちゃうの。
で、平井さんはね。

鈴木君との出会いが占いにでて当たったから、今度は二人の相性を占うことにしたのよ。
結果は……。
マル。
二人の相性は、なかなかいいとでたの。
それで、彼女がすることはわかるわよね。

みんなに、いいふらしたの。
私は、彼とうまくいきそうだって。
その話は、やがて鈴木君の耳にも届いたわ。
彼は、彼女がサッカー部の練習を見にきていたところを知っていたけれど……。

彼女とは、文化祭の時にちらっと話したことがあるだけだった。
なのに、二人がくっつきそう、なんて噂がでていたのよ。
そして、その噂をながしたのは平井さんだっていうじゃない。
……鈴木君は、平井さんのもとにいったわ。

話をするためにね。
それで、なんていったと思う？
１．僕が好きならつきあおう
２．変な噂をながすな