学校であった怖い話
>七話目(荒井昭二)
>I12

あの人形には感情があるのか?
ひょっとしたら、感情のかけらがあるかもしれない。
なにも考えていないはずはない。
少なくとも、僕を取り殺したいという気持ちがあるわけだから……。

人形と、心をかわすことができるかもしれない。
そう思った僕は、かろうじて残っている気力を人形と心をかわすことに注いでみようと思った。
とても危険だとは思ったが。
僕は、ベッドに寝そべるとゆっくり目を閉じた。

人形を誘ってみる。
隣に、人形が一緒に添い寝をしている気配を感じた。
きたな……。
僕は、そのまま心の中で人形に問いかけた。
<君は誰なんだ? なぜ僕を取り殺そうとしているんだ?>

…………………………………。
僕の問いかけには、何も答えてくれないようだ。
もう一度、問いかけてみた。
僕の頭の中に、何かが響いてきた。
これは、男のすすり泣く声だ。

<……もう……いいんだ。……もう……休みたい……。この……まま……だと>
とぎれとぎれに声が聞こえた。
……よく聞き取れない。
でも、僕の試みは成功した。

僕は、人形と心で話すことができたんだ。
だけど、僕には意味がわからない。
そして、その人形は今までの感じとは少し違っていた。
僕が見たことのない、不思議な表情をしていた。

そして、ふと目を開けるとそこにはもう人形はいなかった。
あの人形は、いったい何をいっていたのだろう。
何がいいたかったんだろう……。
僕は、荒井の話を思い出した。

校長が、生けにえになる生徒を選んでいるという話を。
本来ならば、僕はこの学校に来るべき人間ではなかったのだ。
それを、校長が操作したために僕は合格してしまったのだ。

ならば、校長室にいけば、何かわかるかもしれない。
そんな考えが、僕の頭をふっとよぎった。
僕は、重くだるい体を起こし、学校に行ってみることにした。

ずっと家の中に閉じこもっていたせいか、真昼の日差しは僕にはつらい。
太陽までもが、僕の邪魔をしているようだ。
思わずくじけてしまいそうだった。
それでも、僕は最後の気力を振り絞り、学校へ重い足を引きずっていった。

学校は、驚くほど静かだった。
運動部の連中が、練習をしていてもいいはずなのに。
今日は、そろって休んでいるんだろうか。
それに、旧校舎の取壊しは、もう始まっているのだろうか。

ならば、けたたましい工事の音が聞こえてもいいはずなのに。
……でも、今の僕にはそんなことは関係ない。
僕が学校にきた理由はたった一つ。
校長室に行くことなのだ。

……そういえば、家を出てからずっと、人形が僕の側を離れない。
僕を見張っているのか、だんだんと僕との間隔も狭まってきたような気がする。
最後のときが近づいてきたということか。

校長室の前まできた。
誰とも出会わなかったのが、不思議なほどだ。
でも、いい。
もし誰かに出会って、今の僕の顔を見れば、きっと幽霊と見間違えただろうから。
校長室のノブに手をかける。

なぜか、鍵はかかっていなかった。
それは、まるで罠のように思えた。
どうする?
入るか?
1.入る
2.入らない