学校であった怖い話
>七話目(荒井昭二)
>AA12

僕は、誰かに話そうと思った。
そうだ、新堂さんに話してみよう。

とりあえず、僕は日野さんに電話をしてみた。
日野さんでもいいけれど、やっぱりあの話を一緒に聞いていた人のほうがいい。
「……いいよ、それくらいおやすいご用さ」
日野さんは、すぐ新堂さんの電話番号を教えてくれた。

新堂さんは自宅にいた。
「もしもし、新堂さんですか? 僕です、坂上です。実は……」
僕は、あれからのできごとをせきを切ったように一気に話した。

「そうか……、そんなことがあったのか……。
坂上が生けにえだとはな。
あっ、ちょっと待った、今、友達が来てんだ。……ああ友達だぜ……ちょっと頭が……この暑さだろ。俺も……大変……だぜ」

僕は、電話を思いっきり切った。
新堂さんは、途中から受話器に手をかぶせて話していたようだが、僕にはしっかり聞こえていた。
どうせ、友達に僕が暑さで頭がどうにかなったっていってたんだ!!

ひどい……。
結局、みんな自分には関係ないことは興味がないわけだ。
そして、自分が犠牲にならなかったと、ホッとしているに決まっている。

僕は、悔しくなった。
涙がほほをつたった。
涙が暖かい……。
こんな自分でも、まだ暖かい涙を流すことができるんだ。

僕は、はっとした。
僕は、まだ死にたくない。
死ぬ前に、まだやりたいことがたくさんあるんだった。
そう思うと、なにかしなければという気持ちが無気力の中からわきあがる。

僕は、その時ふと荒井さんの話を思い出した。
校長が、生けにえになる生徒を選んでいるという話を。
本来ならば、僕はこの学校に来るべき人間ではなかったのだ。
それを、校長が操作したために僕は合格してしまったのだ。

ならば、校長室にいけば、何かわかるかもしれない。
そんな考えが、僕の頭をふっとよぎった。
僕は、重くだるい体を起こし、学校に行ってみることにした。

ずっと家の中に閉じこもっていたせいか、真昼の日差しは僕にはつらい。
太陽までもが、僕の邪魔をしているようだ。
思わずくじけてしまいそうだった。
それでも、僕は最後の気力を振り絞り、学校へ重い足を引きずっていった。

学校は、驚くほど静かだった。
運動部の連中が、練習をしていてもいいはずなのに。
今日は、そろって休んでいるんだろうか。
それに、旧校舎の取壊しは、もう始まっているのだろうか。

ならば、けたたましい工事の音が聞こえてもいいはずなのに。
……でも、今の僕にはそんなことは関係ない。
僕が学校にきた理由はたった一つ。
校長室に行くことなのだ。

……そういえば、家を出てからずっと、人形が僕の側を離れない。
僕を見張っているのか、だんだんと僕との間隔も狭まってきたような気がする。
最後のときが近づいてきたということか。

校長室の前まできた。
誰とも出会わなかったのが、不思議なほどだ。
でも、いい。
もし誰かに出会って、今の僕の顔を見れば、きっと幽霊と見間違えただろうから。
校長室のノブに手をかける。

なぜか、鍵はかかっていなかった。
それは、まるで罠のように思えた。
どうする?
入るか?
1.入る
2.入らない