学校であった怖い話
>七話目(細田友晴)
>V7

そうなんだ。
担任の先生に頼まれて、いっしょに教材を取りに行くことになってな。
悪い予感はしたんだが、やっぱり、そこを通ろうとするんだよ。
怖かったよ。
でも理由を話すわけにはいかない。

高校生にもなって、幽霊が怖いなんていえないだろう。
我慢して歩いていたんだが、あと数メートルで霊の壁の前にくる、という時に、とうとう気絶してしまったんだ。
でも、気を失っているとき、不思議な体験をしたんだ。

先生は、真っ暗な中に立っているんだ。
目を凝らすと、闇の中に誰かがいるのがわかる。
よく見るとな、それはズルズルに腐った死体なんだよ。
兵隊や学生たち、子供や老人もいたな。
みんな、先生を見ていた。

そして、手を差し伸べるんだ。
先生が自分たちを助けてくれると信じているみたいにな。
皮がむけ、肉が溶けた骨だけの指が、先生に触れた。
すると、しゅーっと煙が上がって、そこから先生の体が溶けていくんだ。
彼らは胸といわず脚といわず、そこら中を触りまくった。

そしてその度に、どろどろと体が崩れていくんだよ。
熱いような冷たいような、変な感覚だった。
気がつくと、保健室で寝ていたよ。
貧血だろうっていわれた。
だから、そのせいで悪夢を見たのかと思ったんだ。

でも違った。
先生の手足には、しっかりと彼らの指のあとがついていたんだ。
彼らが、先生に何をしてほしかったのかは、わからない。
でも、悲しそうだった彼らの表情を思い出すと、今でも胸が痛むんだ。

……さ、先生の話はこれで終わりだ。
もう、十分だろ。
みんな、帰ろう。
先生が、校門まで送っていってやるから。

……僕たちは、黒木先生に見送られて、学校をあとにした。
……それにしても、何とかなった。
怪我の功名というやつか。
七人目は来なかったけれど、代わりに黒木先生の怖い話を聞けたから、先生が七人目ってことになるな。

それにしても、もうだいぶ遅いな。
帰り道に、ふと店先の時計を見ると、もうすぐ九時になろうとしていた。
僕は家に帰ると、今日の出来事を思い起こしていた。
……それにしても、ずいぶんと怖い話があるもんだ。

まあ、風間さんが一人だけ訳のわからない話をしていたけれど、あれはあれで我慢しよう。
明日、日野先輩にどうして風間さんなんて呼んだのか聞いてみればいいことさ。
結構ドキドキしたけれど、おもしろい体験だった。

その時。
突然、電話のベルが鳴った。
今頃、誰だろう?
時計を見ると、もう十一時を回っていた。
どうする?
電話に出るか?
1.電話に出る
2.出ないで放っておく