学校であった怖い話
>七話目(細田友晴)
>AH6

そうなんだ。
壁に耳を押し当てると、悲しそうな泣き声が聞こえるっていうんだよ。
そんなことを聞いたら、試してみたくなるだろう。
先生も、友達といっしょに行ってみた。

そして、壁にそっと耳を押し当てたんだ。
そうしたら、ボソボソと話し声のようなものが聞こえるじゃないか。
夢中になって、耳をすましたよ。
その瞬間だった。
「呪ってやる」
耳元にささやかれた。

驚いて、壁から耳を離そうとした時、たたみかけるようにもう一言。
「殺してやる」
……確かに、そう聞こえた。
先生は、いっしょに来た友達を振り返った。
真っ青な顔をしていたよ。
いや、きっと先生も同じだったろうな。

同じ声を聞いたのは、間違いなかった。
怖くなって、走るように家に帰ったよ。
次の日、友達は学校に来なかった……。
朝のホームルームで、担任の先生が話してくれた。
前の晩遅くに、彼の家でガス爆発が起きたってな。

彼は生き埋めになって、助けられる直前に、息を引き取ったらしい。
それを聞いて、先生は気が遠くなりそうだった。
爆発に巻き込まれて、生き埋めだなんて。
例の、壁の向こうの話と同じじゃないか。

やっぱり、昨日聞いた声は、先生と友達に向けられていたんだ。
それなら、今度は先生の番に違いない。
そう思ったからな。
だけど、その夜も、その次の夜も何も起こらなかった。

先生は呪われていなかったんだ。
どうして友達だけがあんな目にあったのか、それはわからない。
先生は、幽霊に気に入られたんだろうか。
それとも、仲間にしたくないほど嫌われたのかな。

どっちにしても、命拾いしたんだ。
文句をいう気はないけどな。
それから、先生は絶対に、その廊下だけは通らなかった。
卒業するまでな。

だから、この壁を見たのは、実はそれ以来初めてなんだ。
もっと怖いかと思ったけど、案外平気だったな。
まあ、それだけ先生が、大人になったということなんだろうな。

……さ、先生の話はこれで終わりだ。
もう、十分だろ。
みんな、帰ろう。
先生が、校門まで送っていってやるから。

……僕たちは、黒木先生に見送られて、学校をあとにした。
……それにしても、何とかなった。
怪我の功名というやつか。
七人目は来なかったけれど、代わりに黒木先生の怖い話を聞けたから、先生が七人目ってことになるな。

それにしても、もうだいぶ遅いな。
帰り道に、ふと店先の時計を見ると、もうすぐ九時になろうとしていた。
僕は家に帰ると、今日の出来事を思い起こしていた。
……それにしても、ずいぶんと怖い話があるもんだ。

途中で岩下さんたちがいなくなってしまったけれど、あれは何だったんだろう。
……話す人が途中まで一人ずついなくなっていったけれど、あのことはまだ解決していない。
あれは、誰かのいたずらだったんだろうか……?

いや、そんなはずはない。
とてもいたずらとは思えない。
やっぱり、あの学校には何か得体の知れないものが住んでいるんだ。
僕は、夏だというのに、妙な寒気を覚えた。

その時。
突然、電話のベルが鳴った。
今頃、誰だろう?
時計を見ると、もう十一時を回っていた。
どうする?
電話に出るか?
1.電話に出る
2.出ないで放っておく