学校であった怖い話
>七話目(岩下明美)
>A1

……岩下さんの話が終わった。
それでも、七人目は来なかった。
もう時間もかなり遅い。
これ以上待っても無駄だろう。
僕は、集まってくれた六人の顔を見渡すと、深く頭を下げた。

「皆さん、今日はどうもありがとうございました。七人目はついに現れませんでしたが、とても怖い話を聞けました」
そこまでいって、僕はちらりと風間さんのことを見た。

……しょうもない話で場をしらけさせた風間さん。
それなのに、さも自分が一番怖い話をしたとでもいいたげに得意顔で笑っている風間さん。
この人、本当にしょうがないなあ。
「……これで、おもしろい校内新聞が作れそうです。それでは、これで終わらせていただき……」

その時、部室のドアが開き、日野先輩が姿を見せた。
「日野先輩!」
日野先輩は、軽く手をあげてあいさつすると、空いている席に深く身を埋めた。
余程、疲れているみたいだ。

「いやあ、助かったよ。まだみんないてくれて。ごめんな、坂上」
僕は、軽く会釈した。
まさか、日野さんが来るとは思わなかった。

「いやあ、七人目が見つからなくてね。どうしようか迷っていたんだけどさ。さすがに、このまま放っておくわけにもいかないだろ。かわいい後輩を一人残してさ。それで、仕方ないから、俺が来ることにしたわけ。急いで、用事すませてさ。新堂、風間、岩下、それからみんなも、ありがとな」

そういって日野さんは一人一人の顔を見た。
そうだったんだ。
日野さんだけが、ここにいる全員のことを知っているんだ。
みんな、日野さんを見て、それぞれあいさつした。
「ほい。これ、差し入れ」

そして、日野さんは手にしていたビニール袋を無造作にテーブルに投げ出した。
「おっ、気がきくねえ、日野は」
そういって、風間さんがビニール袋の中のものをごそごそと取り出した。
ジュースが入っていた。

缶入りではなく、どれも珍しいミニサイズのペット・ボトルだった。
どこのメーカーだろう。
「さあ、みんな。
好きなの飲んでくれ。坂上、遠慮しないで好きなの飲んでくれよ」
「ありがとうございます」

テーブルの上には何種類もの飲み物がある。
何を飲もうか。
1.コーヒー
2.オレンジ・ジュース
3.トマト・ジュース
4.ウーロン茶
5.最後の残り物