学校であった怖い話
>七話目(風間・岩下)
>A4

「……あ、はい」
少し躊躇したが、素直に答えることにした。
僕の答えを聞くと、彼女は、嬉しそうに笑い、僕の元に駆け寄ってきた。
「よかったね。まだ生きていたんだね」

そして、僕の頭の先から足の先までを目で追った。
「え?」
一瞬、僕には彼女の言葉の意味が伝わらなかった。
「帰っちゃダメ!」
彼女は、背中に目でもついているのだろうか。

突然振り向くと、ドアから出て行こうとする新堂さんを厳しい口調で呼び止めた。
怪訝そうな顔で振り向いた新堂さんだったが、仕方なさそうに踏み出した足を元に戻した。

「なあ、おい。俺は、もう帰るんだよ。
お前が七人目で、最後の話をしてくれるってんなら別だけどな」
一年生の彼女に、生意気な口を聞かれたことで、かなりいらついているようだ。
「私は、七人目じゃないもん」
「じゃあ、帰るぜ」

「今帰ると、あなた死んじゃうよ」
彼女は、物騒なことをさらりといってのけた。
さすがに、新堂さんの動きが止まった。
「俺が死ぬ……? 変な冗談いってると、俺も本気で怒るぜ」
新堂さんが凄もうとも、彼女は平気な顔で言葉を交わした。

「私が七話目をしてあげる。七人目が来る前に」
全員の目が、一斉に彼女にそそがれた。
「七人目が来る? 本当か?」
新堂さんも興味を示したようだ。

「ええ、来るわ。この中の誰かを殺しにね」
そして、彼女は僕のことを見てにっこりと笑った。
……誰かが殺される?
ちょっと待ってほしい。
そんなことを笑顔でいわないでほしい。

「あ、玲子ちゃん!」
彼女は福沢さんを見つけると、彼女の元へ行き、手を握りあった。
福沢さんが声をかけたのに、彼女の存在に今まで気がつかなかったのだろうか?
「わあ、玲子ちゃんもいたんだね。よかったね、殺されなくて」

「もう、早苗ちゃんたら、いつもそうなんだから。私が手を振ったのに気づかなかったの?」
「気づかないよ。おばあちゃん、そんなこと教えてくれなかったもん」
……二人が、よくわからない会話をしている。
僕には、ちょっとついていけそうもない。

「……あなたたち、どいてくれない?
死ぬとか殺されるとか、私には関係ないことだから。私は帰らせてもらうわね」
そういい、岩下さんが二人の間に割って入った。
「あなた、死んじゃいますよ」

「私? うふふ……私が殺されるっていうの? もしそんな奴がいたら、死ぬ前に先に殺してあげるから。人の心配してないで、自分の心配でもしなさいな」
顔では笑っていたが、岩下さんの目は、ひどく冷酷だった。

「……一人でも帰ると、誰かが間違いなく死ぬの。だから、帰っちゃだめなの。呪いを解かなくちゃならないから」
そして、帰ろうとする岩下さんを押し戻し、
部室のドアを閉めた。

「皆さん、席に戻ってください」
彼女には不思議な迫力があった。
福沢さんは、すぐに座り直した。
風間さんは、やってらんないよね、とでもいいたそうに両手をあげ首をかしげると、ため息をつき自分の座っていた席に戻った。

新堂さんと岩下さんは、何もいわず不機嫌そうに席に戻った。
そして、全員が座るのを確かめると、七人目のために用意された席に早苗ちゃん……、もとい元木さんが腰を下ろした。
「私が最後の話をします。坂上君、それでいい?」

元木さんは、僕に同意を求めてきた。
どうする?
1.お願いします
2.いえ、七人目が来るのを待ちましょう