晦−つきこもり
>一話目(前田和子)
>H4

そうよね。
そういうことって、あるわよね。
でも、誤解させたままじゃだめよ。
いいたいことは、きっぱりいわなきゃ。
まあ、それでも聞き入れないって人はいるけどね。

「ち、違います! 私は何も……」
舞は、何も知らないといいはったの。
そこで村人は考えた。
舞は生けにえを盗んでいないのだろうか。
だとしたら、どうして生けにえが社の前にあったんだろう、ってね。

それで出た結論がこうよ。
舞の神託がはずれたから、伊佐男神が怒って生けにえを返しにきたんだ、って。
それを知った伊佐男神はあせったわよ。
舞に迷惑をかけてしまう。
どうにか、この想いを伝えなければならない。
そう思ってね。

でも、伊佐男神ができるのは、天気を変えたり、洪水や地震をコントロールすることだけ。
あとは、折り紙の神託ね。
次の日、舞による神託がもう一度行われたの。
こんどこそはずれないようにってみんな祈った。

(村人はどうしてこう疑り深いのだろう。舞はこのままでいいんだ。
この村の繁栄がいい証拠じゃないか)
伊佐男神は、なんとかそれを伝えようとしたの。
だから、折り紙で人を作ることにしたのよ。

巫女の服を着た女人……舞をね。
生けにえにもらおうとしたわけじゃないわよ。
舞をよく思っているってことを知らせようとしたの。
折り紙で作った舞の周りに、沢山の花を作ってちりばめてね。
ずいぶんかわいいことするわよねえ。

でも、みんなにその気持ちは伝わらなかったのよ。
「どうした? 最近の伊佐男神は。ついに人間を生けにえに選ぶとは」
村人は考えたの。
舞がいいかげんな神託をしたから、伊佐男神はかなり怒っているんじゃないかって。

それで、舞につめよったのよ。
責任を取れってね。
「……わかりました。行きます」
舞はそういったの。
抵抗もせずにね。
葉子ちゃんだったらどう?
こんな時、抵抗する?
1.抵抗する
2.しない