晦−つきこもり
>一話目(前田和子)
>J3

ええー。
そんなこといわないで、教えてあげてよ。
もったいぶらずに、ね?
ほらほら、早くして。
ほら……ん?
葉子ちゃん、なんで下向いてるの?
……もしかして。
実はわからないとか。

……あら嫌だ。
とっておきの怖い話なのに。
ふざけて聞いたらだめよ。
しょうがないわね、教えてあげる。

折り紙ってねえ、様々な時代で、いろいろな儀式に使われていたのよ。
おまじないのようなものから、村をあげて行なうものまで。
だから、折り方もいろいろあるわけ。

今だって使われているでしょ?
ほら、七夕のたんざくとかさ。
あれ折り紙で作ったこと、あるでしょ。

実はね、この村でもあったのよ。
折り紙の儀式が。
それも、村をあげてするようなものがね。

……ねえ、葉子ちゃん。
前に、小さなかわいい船を折っていたわよね。
それがどんな儀式に使われていたのかも知らないで。
ふふふ……。

教えてあげようか。
折り紙の船ってね……死人の魂をねえ、弔う為に使われていたのよ。
普通は、中に形見の品を入れて。
でも、特別にこんなことも行われていたのよ。
罪人の魂をいさめる時にね、折り紙の船に石を入れて流していたの。

なぜかって?
死刑になった罪人は、石で打たれて殺されるのが常だったの。
まずは、人の頭ほどある大きな石で。
罪人がぐったりしてきたら、手のひらに乗るくらいの石で、眉間を叩かれてね。

最後に罪人の眉間を叩いた石には、その魂が宿るとされていたの。
だから川に流して、その魂を清めようとしたわけね。
罪人の呪いを避けるための儀式だったのよ。

でね、その儀式で折り紙の船を流していたのは、どんな人だったと思う?
1.役人
2.隣の家の人
3.罪人の家族