晦−つきこもり
>一話目(鈴木由香里)
>S6
嫌いなのに選んじゃったの?
それは、かなり嫌ってんだね。
嫌い、嫌いも、大っ嫌いってやつ。
あの狭い空間に閉じ込められるっていう感覚や、中途半端な浮遊感。
具合悪くなっちゃうじゃんねぇ。
エレベーターの中でも、業務用エレベーターは最悪だね。
なんでって半端じゃなく汚いからね。
そこのエレベーターも、生ゴミの腐ったようなにおいと、鉄独特のにおいが混じりあってて、ひどく臭かった。
あまりの臭さに、二人とも黙り込んじゃってたよ。
できるだけ、息をしたくなかったからさ。
ゴォーッという機械音だけが、大きく聞こえて……。
そのうち、おかしなことに気付いたんだ。
私は一階だけ下りるつもりで、ボタンを押したはず。
それは間違いない。
なのに一階下りるだけで、こんなに時間がかかるなんて絶対、変!
その時、ガタンと揺れて、エレベーターが止まったんだ。
ピンポーンという軽い音がして、ドアが開くと……。
エレベーターホールの壁には、
『B3』
と、書かれてた。
この文字の意味、知ってる?
フロアの階数を表してるんだけど、そこは何階だったのかな?
1.三階
2.地下三階
3.見当もつかない