晦−つきこもり
>一話目(前田良夫)
>A1

俺が一話目か。
じゃあ、すっごく怖い話をしてやるからな。
みんな泣いちゃうかもしれないぜ。
……久しぶりにこうして集まって、みんな感じてると思うんだけどさ。
うちって、田舎だよな。
今どき藁葺きの家なんて、珍しいってホント。

キューカだの、レキシテキイサンだのっていわれても、わかんねえよな。
でも、この近所には、同じような古い家が何軒かあるんだぜ。
俺の友達の立川も、そういう家に住んでるんだけどさ。
そいつ、去年の夏頃に、変なこといい出したんだよ。

俺の家には、「わらし様」
が住んでるんだ……なんてさ。
もちろん、そんなの信じなかったよ。
でも、俺たちの班、夏休みのグループ研究が決まらなくてさ。
ちょうどいいと思ったわけ。

そいつの家の写真を何枚か撮って、図書館でわらし様のこと調べて……。
うまく行けば、一日で終わるかもしれないじゃん。
だから俺たち、わらし様の研究をすることにしたんだ。
まずは写真だ。

俺たちは、立川の家に行った。
わらし様はいつも、奥の仏間に出るらしい。
俺たちは隣の座敷でカメラを構えて、じっと待った。
でも半日待っても、それらしいもんは現れないんだ。

なんか肩すかしっていうか、がっかりしちゃってさ。
カメラ放り出して、寝っ転がってたんだ。
そしたら急に、立川が叫んだ。
「わらし様だ! わらし様が出たぞ!」
カメラをひっつかんで、ふすまの間からシャッターを切ってるんだ。

「俺にも見せろよ!」
俺は飛び起きて、ふすまを開けたんだ。
そうしたら、フッと線香みたいな匂いがしたっけ。
でも、部屋の中には誰もいないんだ。
立川が嘘ついたのかとも思ったんだけどさ。

とりあえず、フィルムを現像に出してみたわけ。
そうしたら……写ってたんだよ、わらし様が。
写真の中のわらし様が、どんな姿だったか……知りたい?
1.知りたい
2.知りたくない