晦−つきこもり
>一話目(前田良夫)
>H2

可愛くねーの!
それじゃあ、話が終わっちゃうじゃん。
しょうがないから、話してやるけどさ。
あーあ、俺ってやさしいよなあ。

写ってたのは、半ズボンの子供だったんだ。
小学校の一、二年生くらいに見えたよ。
でも、そんな奴がいたら、あのときに気づいているはずだ。
立川の家には、弟なんていないしな。
だから、これがわらし様に違いないって思った。

そうとわかれば、第二段階だ。
今度は、直接コンタクトを取ろうと思ったわけ。
俺たちは、また立川の家に集まった。
前のときみたいに、仏間の隣の座敷で待っていたんだ。

何時間かして、立川がピクッと顔を上げた。
「来た!」
俺は、すかさずふすまを開けたよ。
今度こそ、逃がさないようにな。

……開け放った仏間の中央には、写真で見た子供が立っていた。
わらし様だ!
息を飲む俺たちを見上げて、そいつはニッと笑ったんだ。
「遊ぼ」
「ええっ?」
俺は思わず、聞き返した。

「遊ぼ」
そいつはニコニコ笑いながら、同じ言葉を繰り返した。
「鬼ごっこ、かごめかごめ、何して遊ぶ?」
そんなこといわれたって、困るよな。
こんな反応は、予想してなかったしさ。

大体、こんな子供と遊んだって、つまんないじゃん?
1.そうかもしれない
2.そんなことはない
3.自分も子供のくせに