晦−つきこもり
>二話目(前田和子)
>E3

「うん、きっとそうだよ」
秋山君は同意して、じっと様子をうかがったの。
こういう時、まっさきに駆け寄るのは田崎君の方。
二人とも元気のいい子だったんだけど、田崎君はやんちゃで、秋山君はほがらかっていう感じだったから。

「秋山、来いよ」
田崎君に促され、秋山君はそうっと近付いていったの。
青い服を着た女の子は、草むらに寝転んでいたわ。
「あんな所に寝て……下に虫でもいそうなのに」
秋山君は、ちょっと眉をひそめたの。
だってねえ、ヒナキちゃんって、

本当にいろいろいわれていたんだもの。

そうとう変わっているらしいとか、会った人には、必ず恐ろしいことが起こるとか。
それで多少おじけ気味の秋山君の頭を、田崎君が小突いてね。
「ほら、近寄ってみようぜ」
そういったのよ。
ヒナキちゃんは、目をつぶっていたんだけど。

二人が近寄ると、彼女は目を閉じたままこういったの。
「なあに? 私に会いたかったの?」
1.会いたかった
2.黙っている