晦−つきこもり
>二話目(山崎哲夫)
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そのとおり!
よくわかったな、葉子ちゃん。
冒険家は、冒険しないと、冒険家じゃないよな!

実はな、その町に、地元の人間も全く入らない『森』があると聞いたんだ。
その森は、ある山のすそ野に広がっていてな。
その山に切り立った崖があるということだったんだ。
その崖が、ロッククライミングをするのに、最適だったわけだ。

それを聞いたとき、いても立ってもいられなくなってな。
早速、みんなを集めて、その森がある町に出発したんだ。
その日は、その町に夕方頃到着した。
そこは、聞いていたとおりとても小さな町で、かなりの田舎だったよ。

自分らは、すぐに予約しておいた旅館に入って、次の日の計画をしていたんだ。
するとな、自分らの部屋に、その旅館の主人で、風間と名乗る男が現れたんだよ。

「どうも、いらっしゃい。料理の方は、どう? おいしかったかい?」
その主人は、自分らと同じくらいの若い主人で、とても感じのいい人だったよ。

「ところで、君たちは、明日はどうするの?
何か、予定でもあるの?」
その男は、そう聞いてきたんだ。
自分らは、例の森にある崖で、ロッククライミングをするんだと告げたんだ。
すると、その風間と名乗る男は、跳び上がらんほどに驚いた。

そして、猛反対するんだ。
「ちょっとお客さん! 悪いことはいわないよ。あそこだけは、やめといた方がいい。あそこは、危険なんだ。だから、この町に住んでいる人でも、あの森には滅多に近づかないんだよ。やめといた方がいいよ」
ってね。

自分らは、笑って答えたよ。
自分らに限っては、大丈夫だってな。
自慢じゃないが、自分らはいろんな所を冒険してきたんだ。
この町にある森の何十倍、何百倍もの広さのある、熱帯のジャングルにだって行ったことがある。

それに比べれば、この町にある森なんて、ちっぽけなものだ。
風間と名乗る主人に、そういったんだ。
すると風間は、大きなため息をついて、こういった。

君たちは、何にもわかっていない。
道に迷うから、危ないといっていると思っているんだろう?
あそこにはね、何か得体の知れないものが住んでいるんだ。
だから、危険なんだってな。

葉子ちゃん、風間は、何が住んでいるといったと思う?
1.狸
2.お化け
3.宇宙人