晦−つきこもり
>二話目(前田良夫)
>I7
いい加減なこというなよ。
あそこにいなかった奴に、そんなこと、わかるはずないじゃん。
適当に話を合わそうとすんなよな。
だから、女ってやだよな。
とにかく、何が起こってるのか、俺たちにはさっぱりだったんだ。
あいつらを捜しに行こうかとも思ったよ。
でも、俺たちが行って、どうにかできるわけない。
奴らに何かあったって、起きてこない先生が悪いんだ。
そうだろ?
だから、朝まで待つことにしたんだ。
部屋の真ん中に集まって、夜明けまで起きてることにしたよ。
重苦しい雰囲気だったな。
誰も何も話さないし、目を合わせるのも怖いみたいに、ずっとうつむいてさ。
空気が石になって、頭や肩に載っかってるみたいだった。
雰囲気に耐えらんなくて、俺は立ち上がったんだ。
「やっぱり俺、あいつら捜しに行く!」
そうしたら、みんなホッとしたみたいに立ち上がるんだ。
やっぱり、気になってたんだな。
俺が行くんならって、結局みんなで捜しに行くことにしたんだよ。
怖かったけど、そんなこといってられないじゃん。
仲間なんだからさ。
仲間ってのは、助け合うもんなんだぜ。
そして俺たちは、宿舎を出たんだ。
とりあえず、湖の方へ行ってみることにした。
あいつらは湖に行ったはずだ。
なぜかわからないけど、そんな気がしたんだよな。
静かな夜だったよ。
俺たちは寄り固まるようにして、ビクビク歩いていたんだ。
湖が見えるところまで来たとき、後ろから足音がしたんだ。
先生が気づいて来てくれたのか?
俺は振り向いた。
長く延びた一本道が、向こうの方まで続いてる。
その道を、こっちに向かって歩いてくる、赤いワンピース姿が見えた。
そんな服装に、見覚えはない。
どこの女の人だろう。
そう思って、懐中電灯をそっちに向けた。
……赤いワンピースの上には、あるはずの首がなかった。
首のない女が、俺たちに向かって歩いて来るんだ。
俺たちは、全速力で逃げ出した。
耳元で風がびゅんびゅん鳴ってた。
振り向かなくても、首のない女がついてきてることは、何となくわかってたんだ。
やがて湖に出た。
そのときには、カーッとなって、わけわかんなくなってたんだよな。
ところで、俺がオリエンテーリングのとき、どこに行ったか覚えてる?
1.湖
2.森
◆最初の選択肢で「2.ない」を選んでいる場合
1.湖