晦−つきこもり
>三話目(真田泰明)
>A1

◆一話目〜二話目で石の話を聞いている場合の始まり方


三番目は俺だな。
あれ、電話だ。
ちょっと待っててくれないか。

『もしもし、真田です。ああ、おまえか。えっ、スクープ。ああっ、わかった。明日には戻るから、うん……。えっ、なんだ、そんなことも自分で判断できないのか。うん、それでいいよ。うん……、うん……、じゃあ』
ごめん、ちょっと仕事の話だ。

プロデューサーって、自分の時間がないよね、こんな携帯電話なんていう鈴を付けられてさ。
あっ、話を続けるよ。
俺が報道番組を担当しているのは知っているよね。
ニュースの目玉はスクープだ。
そのスクープとよくであう、縁起のいいお守りがあるんだよ。

ちょっと変わった石なんだけどさ。
そのおかげで、今の地位を確立したと思えるぐらいだ。
これから話すことは、そんなスクープの中の一つなんだ。

あれは二年ぐらい前かな。
俺の番組の視聴率が下降線をたどってたんだ。
視聴率のとれない番組のプロデューサーなんて惨めなもんさ。
俺は苦しんだよ。
番組の質自体は高い評価を受けていたんだけどね。
やっぱり視聴率が第一さ。

それで、事態の打開のための企画会議を開いたんだ。
すると報道記者の一人がこんなことをいったんだよ。
「北崎洋子に、ちょっとした噂があるんですが……」
……と、いうものだった。
俺は悩んだ。

俺自身としては、質の高い報道番組を目指していたからな。
彼のネタは、確かにスクープには違いなかったが、かなりスキャンダラスな内容だったんだ。
番組の質と、視聴率……。
これは報道関係者にとって永遠のテーマだよ。

葉子ちゃん、どう思う。
でも、ちょっと難しいかな。
1.視聴率は、やっぱり重要だと思う
2.泰明さんには、番組の質を目指して欲しい