晦−つきこもり
>三話目(真田泰明)
>AE6

その後、どんなに机を探しても、手がかりは見つからなかった。
そして俺はもう一度、机の上のノートパソコンを調べてみることにしたんだよ。
俺はパソコンのスケジュールファイルを開いた。

すると行方不明になった日付のところに、誰かの住所が書いてあったんだ。
あいつ、ここにいったのか……って、俺は思った。
そしてその住所に行くことにしたんだよ。
彼のノートパソコンに記録されてた住所は、内陸のある山間の村だった。

ただ実際に行ってみると、俺の描いていたイメージとはかなり違ってたんだ。
近郊の都市のベッドタウン的な場所で、それほど秘密を保持するという雰囲気でもなかったのさ。
のんびりとした新興住宅街で、事件なんかとは無縁に思えたんだよ。

俺は、気をとりなおして、ファイルに記録されていた場所に向かった。
そこは分譲住宅の中にあったんだ。
まだ空き地で住宅は建てられていない。
出川はここで何を……?
俺は、その周辺をあてもなく歩いた。

平日の昼下がりのせいか、人通りはない。
暖かい日が差し、ほのぼのとした陽気で、奇怪な事件が起こっているとは、とても思えなかった。
ほどなく、俺は元の場所に戻ったよ。
その時さ……。

俺の目は、空き地の隣の住宅に釘付けになったんだ。
その家には、『北崎』という表札が掛かっていたのさ。
……ということは、この家は北崎洋子の家なんだろうか?
出川は彼女の取材をしていたんだから、手帳に彼女の住所が書かれていても、別に不思議なことじゃない。

ミステリーでも何でもなかったのか……。
謎に満ちた怪事件を少しでも期待していたのか、俺は拍子抜けしていたんだ。
だけど偶然ってこともありえるだろ?
それに、俺は心の奥に何か引っ掛るものを感じてたし……。
……いや。

ただ、謎に満ちた大事件に期待をつなぎたかっただけかもしれないな。
とにかく、俺は意を決すると、その家の呼び出しベルを押したんだ。
家からは何の反応も無い。
留守か……?

葉子ちゃん、どう思う。
居留守だと思うかい。
1.居留守だと思う
2.本当に留守では?