晦−つきこもり
＞三話目（真田泰明）
＞AG3

あたり！
それとも知ってたのかな。
そう、北崎洋子は整形したっていう話だったんだ。
出川の語る話はこうだった。
北崎洋子のデビュー前のことが謎に満ちているのは、整形前の彼女の顔を知られていないためじゃないか……。

俺は、とりあえず彼に取材を続けさせることにしたんだ。
微妙な問題だよな……。
俺は迷っていた。
女優の整形なんて、たいして珍しくもないネタだからさ。
番組のカラーとも違ってたし……。

たださ、俺は昼のワイドショーを担当している同僚を思い浮かべて、いざとなったらワイドショー班に『貸し』を作っとくのも悪くないか……って思ったんだ。
それで、見通しが立つまでは極秘にすることにしたのさ。
それから週に一回くらいのペースで、出川の報告を受けた。

その内容を整理するとこうだ。
まず、彼女はデビュー前は、ずぶの素人だったこと。
ライバルの事故や死など、不思議な幸運で登り詰めたこと。
それらの事件には、彼女が関わった形跡がまったくないことだ。

出川は、それらのことから状況から判断して、あらためて事故の事件性を調べているようだった。
彼は更に調査を続けた。
しかし、その後の調査は空回りしている様だったな。
具体的な証拠が、何も見つからなかったんだ。

俺としては、何ともいえない気分だったよ。
正直いって彼女には好感を持っていたしさ。
かといって、取材が無駄に終わるっていうのも、いい気はしないしね。
ただ彼女が実力とも、強運ともとれるもので、のし上がってきたのは確かだった。

けっして誰かの思惑で、彼女はスターになったのでは無かったんだ。
そして調査を始めてから二ヶ月が過ぎた。
この頃になると、出川の報告にも新しい情報はなくなってきてたんだ。
俺はちょっと心配になったんだ。

ネタが掴めなくて焦り始めると、調査のやり方が陰湿になってくるからさ。

葉子ちゃん、こういう芸能人のゴシップの取材、どう思う？
１．ちょっとかわいそう
２．芸能人だから、しょうがない