晦−つきこもり
>三話目(真田泰明)
>AH3

あたり!
それとも知ってたのかな。
北崎洋子の出生には、何か秘密があるらしいんだよ。
彼女は、三才になるくらいまで戸籍もなかったらしいんだ。
しかもそれだけじゃあない。
母親は、彼女が十六才の時、怪死しているんだよ。
微妙な問題だよな……。

俺は迷っていた。
戸籍がどうのというのには、彼女に問題があるわけではない。
まあ強いていえば母親の死だ。
俺は、とりあえず取材を続けさせることにしたんだ。
それから週に一回くらいのペースで、出川の報告を受けた。
しかし、その後の調査は空回りしている様だったな。

具体的な証拠が、何も見つからなかったんだ。
俺としては、何ともいえない気分だったよ。
正直いって彼女には好感を持っていたしさ。
かといって、取材が無駄に終わるっていうのも、いい気はしないしね。

ただ彼女が実力とも、強運ともとれるもので、のし上がってきたのは確かだった。
けっして誰かの思惑で、彼女はスターになったのでは無かったんだ。
彼女の不幸をネタにして視聴率をとっても、あまりいい気持ちはしないだろ。

俺は、なかなか方針を決められずにいたんだ。
俺は、彼女自身が母親の死に関わっているとかじゃなければ、報道する気はなかったけどね。
そして調査を始めてから二ヶ月が過ぎた。
この頃になると、出川の報告にも新しい情報はなくなってきてたんだ。

俺はちょっと心配になったんだ。
ネタが掴めなくて焦り始めると、調査のやり方が陰湿になってくるからさ。

葉子ちゃん、こういう芸能人のゴシップの取材、どう思う?
1.ちょっとかわいそう
2.芸能人だから、しょうがない