晦−つきこもり
>三話目(山崎哲夫)
>A9

自分も、そうなることを願っていたよ。
でもな、やっぱり自分の生半可なお経ぐらいじゃ、どうにもならなかったんだ。
もうどうしていいのかわからなくなってな。
テントをたたく音は、激しくなっていくばかりで、もう頭がどうにかなってしまいそうだったよ。

効果はないとは思ってもな。
それでも、自分にはお経を唱え続けるしかないだろ?
それで、自分はお経を唱え続けたんだ。
テントをたたく音に負けないくらいの大きな声でな。
幾分か、テントの外の光が和らいだ気がしてきた。

お経の効果があったのだろうか。
少し、安心した時だ!
自分の声に混じってな……。
後ろから……声が聞こえてきたんだよ!
まるで、自分の唱えるお経にハモっているように……。

お経が、聞こえてくるんだ!
自分が、唱えるのをやめても聞こえるんだ! そのお経は!!
後ろを見るのも怖い!
わかるだろ!
なあ! こんな時後ろを見る勇気があるかい?
1.ある
2.ない