晦−つきこもり
>三話目(鈴木由香里)
>R7

そう、素直に受け取ってもらえて嬉しいわ。
じゃあ、話の続きに戻るよ。
葉子は、
「どこでもいい」
って答えたけど、自殺の方法で、大きく男女の比率が違うのが入水自殺なんだって。

湖や、川での入水自殺って、女性が多いんだってね。
でもさぁ、身投げするっていうんならともかく、静々と水に入って行く入水自殺って、何か重石になる物を身体に着けないと、死ねないような気がするんだけど……。

私、つい泳いじゃいそうな感じがしてさ……。
なんてったって、水泳は小学校に上がる前から、私の得意分野だったからね。
よく、プールは平気でも海は苦手って子がいるじゃん。
だけど、私は海で泳ぎを覚えたからさ。

波があろうが、水が辛かろうが、全然平気だったよ。
死体を見つけた時も、やっぱり私は泳いでたんだ。
……あれは、高校一年の夏休みだった。
今の葉子とそんなに変わらないくらい?

私は、高校の友達数人と海水浴に行ったのさ。
海ったって、そんな豪華なビーチじゃないよ。
家族連れとカップルで賑わう、平凡な海水浴場。
夏の暑い日だったからさぁ、もう『イモ洗い』って言葉がぴったりって感じ。

人ばっかりで、とても泳げる環境じゃなかった。
みんな、お風呂に浸かるみたいにして、ちまちま遊ぶのが精一杯ってスペースしか、空いてなかったんだもん。
水浴びしに来た人たちは、それでも充分なんだろうけどさぁ。

私としては、やっぱ泳ぎたいじゃん。
だから、人のいないスペースを探して、かなり沖の方に出たんだ。
でも、遠浅がウリの海水浴場じゃ、本当にどこまで行っても人がいるんだよね。

しょうがない、この辺で遊ぶか……って、あきらめかけた時。
あれ……?
私は、海水浴場の端に、誰も泳いでいない一角があることに気付いたんだ。
そこは、砂浜の上から海中までテトラポットが積まれた一角で、よく見れば遊泳禁止のブイが浮いてる。

ところがさぁ……。
……パシャッ。
そのブイのすぐそばで水しぶきが上がり、水面から白い手が突き出されたんだ。
白い手は、大きく水をかいて海中に消え、またヌッと出てきては、消える。

誰かが泳いでる!
そう思った途端に、私の頭の中に悪魔のささやきが聞こえてきたんだ。
なーんだ、泳いでる人だっているじゃん。
あそこなら広いから、思う存分、泳げるもんねって誘惑するのさ。

もちろん、私にだって多少の良心はあるからさ。
あそこは遊泳禁止だから泳いじゃいけないの。
狭いけど、安全な所で遊んだ方が……って迷ったよ。

なんだか、信号は赤なんだけど、車が全然走ってない。
信号が青になるまで待つのも、時間の無駄なような気がする……。
って感じ?
よくあるじゃん、こういうの。

葉子は、赤信号でも車が走ってなかったら渡っちゃう?
それとも、信号が変わるまできちんと待つ?
1.きちんと待つ
2.時と場合による
3.赤信号、みんなで渡れば怖くない


◆最初の選択肢で「2.ない」をを選んでいる場合
1.きちんと待つ
2.時と場合による
3.赤信号、みんなで渡れば怖くない