晦−つきこもり
>三話目(藤村正美)
>L3
彼も、そうしたんですわ。
そうすれば、間近に接してもらえると思ったんでしょうね。
そして彼は、診察室に通されました。
浦野先生と向かい合ったとき、武内さんはカーッと上がってしまったんですわ。
恋しい人と二人きりで、向かい合っているんですもの。
無理もないですわ。
見れば見るほど、浦野先生の美しさは際だっていました。
光輝いているような、そんな錯覚さえ起きるほどにね。
それに比べて、自分はなんて平凡なんだろう。
こんな自分は、先生にはふさわしくないんじゃないか……。
武内さんは、そう思ってしまったんですわ。
「それで、あなたはどうしたいんですか?」
そう、先生に聞かれたとき、彼はとっさにいっていました。
「浦野先生のように、美しくなりたいんです!」
いってから、しまったと思いました。
いきなりこんなことをいったら、変な男だと思われてしまうんじゃあ……と、不安になったんですわ。
でも、先生はニコッと微笑みました。
「それが、あなたの望みなら」
武内さんは、自分の耳が信じられませんでした。
浦野先生は、美しい微笑みを浮かべて、彼を見ています。
先生にふさわしい男になれる。
そのときの彼の気持ちが、想像できます?
どんな思いだったのでしょうね。
1.嬉しいと思う
2.不安な感じ