晦−つきこもり
>三話目(前田良夫)
>A1

よし、じゃあ俺の番だな。
えーと、何の話をしようかな。
俺の通ってる学校って、結構古いんだって。
創立何十年とかっていうから、父ちゃんたちも通ったんじゃないのか。
そういうのって、何か変な感じだよな。

子供の頃の父ちゃんなんて、想像つかないや。
それが、ランドセルしょって、学校に通ってたなんて、変なの。
そうそう、通うっていえばさ、通学路に一本の電柱があるんだ。
昔からあったのかなあ?
それでさ、その根元に、ときどき変なオヤジが座ってんだよな。

よれよれのTシャツに腹巻き巻いて、健康サンダルでさ。
ござとか広げて、にまにま笑いながら、変な物売ってんの。
すっごい怪しいんだけど、そこが面白くてさ。
学校帰りに、よく寄ったんだ。
ある日、また例のオヤジがいたんだ。

黒っぽい布敷いて、その上にアクセサリーを並べてたっけ。
俺が見てると、手招きしてさ。
「幸運を呼ぶアクセサリー『風間スペシャル』は、いらないかい?」
なんていうんだ。

でも、俺は男じゃん。
男がアクセサリーなんて、おかしいと思うだろ?
1.おかしくはない
2.やっぱり変だ