晦−つきこもり
>四話目(真田泰明)
>A1

次は俺の番だな。
これから話すことは、何年か前に本当にあった話なんだ。
あれ、電話だ。
ちょっとまってくれないか。
『もしもし、真田です。ああ、おまえか。うん………、うん………、それは例のテープの奴でいいよ。
うん………、うん………、じゃあそれでよろしく』

ごめん、ちょっと仕事の電話だ。
プロデューサーっていう仕事は、休みも何もないよな、ははっ。
あっ、話を続けるよ。
みんなが知っている怖い話って、目で見て怖いと感じることが多いと思うんだ。

気配とか、気味悪い音とかあるけど、それもやっぱり目に見えるものが、元になっているんじゃあないかな。
でも怖い話って、音や、声という要素が欠かせないと思うんだ。
映画なんかでも、効果音で結構、画面のイメージが変わってくるよね。

それに悪魔を呼び出す呪文、人を呪う呪文、言葉は喋ったり、書いたりすることで、いろいろな効果を発揮されるらしい。
喋ったり、音声として発するということで、何か特別な力が働くみたいだね。
これから話すことは、あるものを音声として発したために起こった悲劇なんだ。

みんなは映画やドラマで、足音とか、コップを置く音とかを、後でアフレコで入れてるってこと知ってるかな。
編集されたフィルムに合わせて、技術者がその場で足音を立てたりコップを置いたりして、映像に音を付けていくんだ。

特殊な効果音なんかは、9ミリのオープンテープにあらかじめ作っておいて、映像に合わせて再生するんだよ。
だから、映像は撮って編集すれば、終わりってわけではないんだよ。
音響、つまり、映画の音を作る仕事は非常に重要で、無くてはならない作業なんだ。

そしてそんな作業中に、その力のある音声が発せられたんだ。
怖い出来事のきっかけになった言葉って、どんなものかわかるかな。
1.悲鳴
2.呪いの言葉
3.ある人間の死に際の言葉