晦−つきこもり
>四話目(真田泰明)
>A3

いや、もう一度、テープを探しに行ったんだよ。
でもさ、ある訳ないんだ。
だから、一応は探しながら頭の中では言い訳を探していたよ。
(正直にあやまるしかないか………。でも何で僕が謝らなくてはならないんだよ)

まあ、そんなことを考えながら探していたから、気が付いてみると、とんでもないとこを探していたんだよ。
とりあえず、録音スタジオに戻ろうと思って振り向くと、目の前に古ぼけたテープがあった。
(あれ………、こんな所に『悲鳴』のテープが………)

インデックスには、『悲鳴』とだけ、殴り書きにされているテープがある。
しかし、まあどうせ使い物にはならないだろうと思いつつも、スタジオにそのテープを持っていったらしいんだ。

「これがラストです」
そういって、最後のテープだって前置きしてから、再生したらしいんだ。
北田君はどうせダメだろうと思っていた。
しかし、数秒間、沈黙が続いた、凄い悲鳴だった。
しばらくの間、静寂がスタジオを覆ったんだ。

そしてかなり時間がたってから、監督が沈黙をやぶった。
「………O、OK!」
監督はその悲鳴にOKを出したんだ。
しかし誰も声を出すものはいなかった。
そしてしばらくして、北田君はやっと仕事が終わったという、実感が湧いてきたらしい。

でも、それが悪夢の始まりだったんだ。
ほんとうの悪夢だ………。

やっと終わった。
迷惑な話だ。
なんで僕がこんな苦労しなくちゃいけないんだ。
まあ、あの監督が一番の被害者なのかもしれないけど。
「北田君、お先に」
助監督の佐藤さんが、挨拶して帰っていった。

「おつかれさまでした」
僕はそう返事をして、片付けを急いだ。
残っているのは、もう僕だけだ。
「さて、帰るか」
片付けを終わらせ、僕は帰ろうとした。
かすかに悲鳴が聞こえた。
「なんだろう」
僕はあまり気にしなかった。

ドアのところに歩いて行くと、廊下へ出た。
もうビルにはあまり人がいないのか、ひっそりとしている。
(あの悲鳴を聞いた後だけに、気味が悪いな………)
廊下を歩きだし、階段に向かう。
そして、何歩か歩くと、また悲鳴が聞えた。
(→廊下に出る)
(→廊下で体力が尽きた場合)