晦−つきこもり
>四話目(前田和子)
>AB9

くさいわね。
やだなあ、哲夫おじさんって熱すぎる。
今、最も熱い男なんじゃないかしら。
「葉子ちゃん、
もしかして鍵をかけているの?」
和子おばさんの声。

「鍵は左に引いて開けるのよ、間違えてない?」
……あ、そうか。
そろそろと、鍵に手をかける。
開いた!
さあ、これで脱出よ!
「葉子ちゃん!
よかった!!」
哲夫おじさんが、手を差し出してくる。

その手を、泰明さんがぺちっと叩いた。
「哲夫、熱くなるなよ。お前、今、もっとも熱い男なんじゃないか?」
「……泰明兄さん、それ、どういう意味ですか」
「いや、なんとなく」
きゃっ。

私と泰明さん、同じことを考えていたのね。
どうしよう。
私達、赤い糸で結ばれているのかしら。

「葉子ちゃん、
大丈夫だった?」
あ、和子おばさん。
「お騒がせしてすみません」
「あら、いいのよ。そうだわ、ちょうどいいから教えてあげる。葉子ちゃんが宝物を隠していたのって、実はこの部屋だったの」
ええっ、そうくるとは。

「良夫と一緒に隠していたのよね。場所も覚えてるわ。そう、あの棚の裏よ。
どう? 探してみる?」
ええっ、良夫とだったの?
1.探そう
2.やめよう