晦−つきこもり
>四話目(前田良夫)
>F9

そうだろ。
落ちてた上履きも、真っ白だったんだよ。
俺、思わず駆け寄った。
上履きは、屋上の床のへり、ギリギリに落ちてたよ。
まさかとは思うけど、園部のヤツ、俺から逃げようとして落ちたんじゃあ……?

俺はしゃがんで、へりから地面を見下ろそうとしたんだ。
ジリ……ジリ……と、ちょっとずつ前に進んでさ。
吹き上げてくる風が、モロに顔に当たる。
もうすぐ、下の地面に倒れた園部の姿が、見えるような気がした。

だけど……いなかったらどうしよう。
空中で消えたみたいに、影も形もなくなってたら?
それより、地面に立って、こっちをニヤニヤしながら見上げてたら!?
考えてたら、やな気分になってきた。

それでも頑張って、のぞいてみたんだ。
下の方に見える地面には…………誰もいなかった。
その瞬間、俺の背中を、誰かが押したんだ!
「わーーーーっ!」
危なく落ちるとこだった。

コンクリートのへりを抱え込むみたいにして、何とか耐えたんだ。
下の地面が、ぐらぐら揺れて見えた。
何か、クラッとしたな。
気がついたら、園部が後ろに立ってた。

意地悪そうに、ニヤニヤ笑いながらさ。
「残念、落ちなかったわね」
ベトベトした、嫌な声だった。
「カップケーキだって、あんたが食べると思ったのに。本当にしぶといんだから」

「何だと?」
俺は聞き返したよ。
魔女かもとは思ってたけど、園部がそんなこというなんて、やっぱり信じられなかったからな。
「うふふ……助けてほしい? 殺さないでって、頼んでみてよ」
園部は、バカにしたような顔で俺を見てる。

葉子ネエだったら、どうする?
1.助けてと頼む
2.絶対に頼まない


◆最初の選択肢で「2.嫌い」か「3.好きでも嫌いでもない」を選んでいる場合
2.絶対に頼まない