晦−つきこもり
>五話目(前田和子)
>A6

じゃあ、いくわよ。
風間さんの生霊を降ろしましょう。
……どうしたの?
不安?
大丈夫。
生霊は、白い煙のような外見をしているそうよ。

とり憑かれそうになったら、鼻をつまんでサルのマネをするといいみたい。
サルって、霊を退ける力を持った動物ってことだから。

分かった?
サルのマネよ。
じゃあ、風間さんの生霊を呼び出すからね。
ほにゃらかぷーーーっ、はにゃらかぴーーーっ、なむなむなむ、はーーーーっ!
………………………………………
……………………………………… 。

あら?
生霊、でてこないわね。
失敗したかしら。
こういうのって、霊感がある人じゃないとだめなの?
……和子おばさんは、なんども首をかしげた。
人の生霊なんて、そんなに簡単に呼び出せるものじゃないわよね。

(こんにちは、お嬢さん)
……えっ?
(わたしのことを呼んだのは君かい?)
……あ、あれ?
なんだか、変な声が頭に響くんだけど。

(……やあ、わたしは、風間望だ。
一月一日生まれ、乙女座のAB型さ。えっ、一月一日は、乙女座じゃないって?
わたしの故郷では、一月一日が乙女座なんだよ。……と、いうことにしておいてくれ。

だって、今は乙女座の男性がはやりなんだろう?
そのへん分かってくれよベイビー。
よろしく哀愁さ)

「い、いやあああっ」
私は、怖くなって大声で叫んだ。
一体これは何?
もしかして、風間さんの生霊?
私にとり憑いちゃったの?

「どうしたの? 葉子ちゃん?何か感じたの? 風間さんの生霊が降りてきたの?」
和子おばさんが、私の肩を揺すっている。
1.確かに降りてきた
2.わけがわからない
3.きっとこれは悪い夢