晦−つきこもり
>五話目(前田和子)
>T5

風間さんのステップは軽やかよ。
彼の得意わざは、三の字固め。
えっ? そんなステップはないって?
……そんなはずないわ。
彼、三の字固めが得意だっていっていたもの。

彼のいうことに、間違いはないわ。
……たぶんね。
ねえ、葉子ちゃん、お願いがあるんだけど。
私、確かめたいことがあるの。
彼について。
だからここで、降霊をしたいの。

死んだ人の霊を呼び出すんじゃないわよ。
風間さんの生霊を降ろしたいの。
実は私、最近彼に危険な香りを感じているのよ。
抽象的でわかりづらい?
あのね、私……その……風間さんに、口説かれている気がするの。
みんな、誰にもいっちゃだめよ。
本家の妻としての体面があるし。

もし彼に口説かれているとしたら、なにかとまずいでしょ。
反対に、私が勝手にそう感じているだけだったら、彼にも悪いし。
だから、彼の気持ちをこっそり聞きたいの。
生霊を呼び出してね。

いい方法でしょ。
風間さんが呼びだされた時のことを覚えていても、夢でも見たんじゃない、ってことですまされるじゃないの。
じゃあ、始めましょうか。
1.始めよう
2.ちょっと待って