晦−つきこもり
>五話目(山崎哲夫)
>H9

葉子ちゃん、そういう奴が好みなの?
うーん、じゃあ、短い話を一つな。
ショーンの好物についてだ。
奴は、アップルパイが好きだったよ。
マザーグースで、アップルパイが出てくる歌があるらしい。

その歌を聞いてると、アップルパイがおいしそうに思えてしょうがないっていうんだ。
小さい頃から、よく歌っていたらしい。
歌うのも、食べるのも好きだったんだと。
こんなところでいいかな。
じゃあ、財宝を探す計画について話すぞ。

自分達は、また礼拝堂を探ろうという話をしたんだ。

まず自分は、礼拝堂で男の子の霊に腕を掴まれたことを話した。
そして、日曜日の礼拝の時も、同じ霊を見たとね。
「きっと、あいつが財宝の番人なんだよ」

「ちょっと待てよ、テツオ。その霊が日曜礼拝に出た時って、『財宝がここにあるよ』っていったんだろ?」
「うん」
「僕が最初、日曜礼拝で聞いた財宝の噂も、そいつの声だったのかもしれないよね。だとしたら、なんで番人が財宝のありかを伝えるんだい?」

「……なんでだろうなあ」
いわれてみると、確かにそうだった。
自分は、頭が混乱したよ。
「そうだ! 罠に違いない!!」
「結論を出すのはまだ早いんじゃないか? テツオ、また礼拝堂を調べに行こうよ。明日の夜はどう?」

「ああ。しかしあの霊は一体何なんだろう。今度会ったら、離してくれないかもな」
「テツオ、やめてくれよ」
ショーンは、寝る用意を始めた。
自分も、ずいぶん眠たくなっていたからな。
その夜は、もう寝ようということになったんだ。

しかしあいつ、夜中に何度も人の足を蹴飛ばすんだよな。
寝相の悪い奴だったなあ。
まあ、それはどうでもいいか。
次の日の夜、自分達はまた、礼拝堂を調べに行ったんだ。
だが、鍵がかかっていたんだよ。

「昨日は開いてたのに……」
残念そうにいうショーンを見ながら、ちょっと途方にくれてしまった。
その時だ。
「またあなた達ですか?」
シスター・エマが現れたんだ。
思わず焦ってしまってね。
自分は、わけのわからないことをいってしまったんだよ。

「いやあ、そうですね、はあ、まあ、そんなとこです」
えーと、英語でいったらこうだ。
「アア……フウン、イヤァー、ンン……ソー、オーケー」
うん、まだまだしゃべれるぞ。
実はおじさんは、英語がぺらぺらなんだよ。

葉子ちゃん、よかったら今度、教えてあげるからな。
1.疑いの目で見る
2.素直に喜ぶ