晦−つきこもり
>五話目(鈴木由香里)
>J7

よかった。
葉子が、素直に信じてくれてさ。
さっき、ミイラに見覚えがあるっていったじゃん。
そのミイラは岡本さんだった……。
これなら納得がいくじゃんね。

あらためて、そのミイラを見るとさぁ、なるほど、あの骸骨をじっと見つめてるように思えた。
以前の岡本さん、そのままにさ。
目を閉じてるのに、何故か、そんな風に見える。
……そうかぁ。

岡本さんたら、ミイラになったんだ。
おもいきったことをしたもんね。
……なんてことをぼんやり考えてるうちに、あの男の姿は見えなくなってたよ。
正体なんかは、まったく謎に包まれたまま。

謎っていえば、いったい誰が岡本さんのミイラを作ったのか?
ミイラにだって作り方ってものがあるじゃん。
それに、江戸時代の衣服や、埃の入手の方法は?
あの男が、関係してることだけは確かだろうけど、考えてみると不思議なことだらけ。

最新の年代測定法も通用しないなんて、もう人間業じゃないよね。
何かこう……。
人知を超えた力を感じない?
神か悪魔か、そういった存在があの男の姿を借りて、岡本さんの願いをかなえたんだと思うよ。

今でも、あの博物館では、岡本さんのミイラとあの骸骨は同じ室内に、仲良く展示されてるんだ。
こういうのも、二人仲良くっていうのかなぁ?
江戸時代のミイラって設定も、あの骸骨のそばにいるためだったのさ。

歴史的価値なんて関係ないもん。
恋に生きる女って、恋に死ねるものなんだって思った。
私にはちょっと真似できないけどさ……。
葉子はどう?
1.私ならできる
2.私にも真似できない