晦−つきこもり
>五話目(藤村正美)
>A1

私の番ですのね。
本当のことをいうと、あまり、こういう話はしたくないのですわ。
けれど、こういう席ですもの。
我慢して話しますわね。
…………私たち看護婦は、患者さんの介護のプロフェッショナルです。

ですから、個人的に看護を依頼されることが、たまにあるんですのよ。
私の同僚にも、一人いましたわ。
彼女は、知り合いから、ある少女の看護を頼まれたんですの。
何でも幼い頃から病弱で、家から出たこともないのだとか。

しかも幼い頃にご両親を亡くされて、お兄様と二人きりだったのですわ。
お兄様は元医師でしたが、妹さんのためになればと、空気のいい田舎へ引っ越したのだそうです。
詳しくは知りませんが、お給料も、かなりのものだったらしいですわ。

それで彼女は、その家に行くことにしたのですけれど……。
葉子ちゃん、彼女は、お給料につられたのだと思います?
1.少しは、そういう気持ちがあったと思う
2.とんでもない、そんなこと