晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>2E4

俺は花田さんの所へ行く。
「花田さん、似合わないですね、ははっ」
花田さんも苦笑した。
「いやあ、何かシナリオの参考になるかと思ってさ、はははっ」
照れてる顔も、また似合わなかった。

「まあ、この部屋の主は、どうも香水コレクターらしいぞ」
そういって、鏡台の引き出しを指す。
確かに年代物と思われる小瓶が、ぎっしり詰まっている。
そして中には、彩り豊かな液体が入っていた。

(香水というのは、こんな小瓶に入れておいても揮発しないものだろうか………)
ここが百年もの間、人が住んでいなかったということが信じられなかった。
俺は興味本位で一つ取ると、ふたを開け、匂いを嗅いだ。

「なんだ………、何か変な臭いがしますよ。本当に香水ですか………」
その瓶の中の液体は、異臭を放っている。
鼻から放し、ふたを閉じた。
「香水って、腐るんですか………」
俺は花田さんの顔を見ながら、そう聞いてみる。

「ちょっと貸してみろ………」
そういって花田さんは、俺の持っていた小瓶を取り上げると、ふたを開け鼻に近づけた。
そして、何か怪訝そうな顔をした。
「泰明君。もしかしたら、これは毒かもしれないぞ………」
彼は睨むように俺を見る。

「えっ、毒………………、臭いでわかるんですか」
俺は花田さんの持っている小瓶を見た。
(なぜ、花田さんは毒の臭いなんて………)
そんな疑念が心に浮かんだ。
花田さんもそんな俺の気持ちをさっしたのか、こんなことをいう。

「いやあ、ちょっと毒について調べたことがあるんだよ………、前に、あるシナリオを書くときにね」
それはいい訳するような口調だったが、多分、本当のことだろう。

「まあ、取り敢えず、明日、調べてみましょう………」
俺はこの話を、この場は終わらせようと思った。
「そうだな、俺もそんなに自信があるわけじゃないからな………」
二人の間に、少し沈黙が走る。

「泰明さん、そろそろ行きましょうよ」
扉の所で、河口君が叫んでいる。
「花田さん、行きましょう………」
俺達は河口君達の方に歩きだす。
そして部屋を出た。

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