晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>2F4

俺はこの部屋に住んでいた人の姿に、興味があった。
(いったいどんな貴婦人が、この部屋の住人だったんだろう)
そう思いながら、河口君達が見つけた絵のところにいく。
貴婦人の絵は、やや高い位置にかけられていた。

その絵は典型的な肖像画で、そこに描かれている貴婦人は着物を着ている。
婦人の衣服は明治時代を感じさせる肖像画だった。
(若いな………、まだ三十前だろうか………)
そこに描かれている貴婦人は、若い美しい女性だった。

ここの主の婦人というより、娘でも通る。
俺がそこで見つめている中、背後で呼ぶ声に気づいた。
「泰明君、そんなにこの貴婦人が気に入ったのか、ははっ」
花田さんだ。

「泰明君はこういう子が好みなのか」
俺と花田さんが絵を眺めていると、吉川の悲鳴が突然響いた。
花田さんは吉川の所に駆け寄っていく。
俺も彼の後を追った。
そこに着くと、吉川が尻餅を付いている。

「いや、何でもないです………、すいません………」
彼は何か照れ笑いしながら、そんなことを叫んでいた。
「どうしたんだ、吉川君」
花田さんは、心配そうに声を掛ける。

「すいません………、本当に何でも無いんです」
吉川はその話には触れられたくない、そんな感じだった。
「吉川、鏡で自分の顔を見て驚いたんだろう、ははっ」
河口君は、吉川をからかう。
「違いますよ………、そんなんじゃありませんよ!」
吉川がムキになって否定する。

どうも、図星らしい。
みんなから、笑いが漏れだす。
俺は笑いを堪え、みんなにこういった。
「そろそろ行こう」
そしてみんなは頷くと、扉の方へ向う。
俺達は部屋を出た。

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