晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>2G4

宝石が気になった。
(本当に本物なんだろうか………)
俺は宝石を手に取り、ツタの間から漏れる月明かりにかざした。
(エメラルド?………)
その石は緑色の光を放つ。

宝石の知識がない俺には、本当にエメラルドか、確証はなかった。
ましてや本物か、それとも偽物なのかさっぱり見当も付かない。
(とにかく、明日を待つしかないか………)
そんなことを、宝石をかかげながら考えていた。

すると俺は、背後に気配を感じる。
振り向くと、そこには花田さんがいた。
「本物かい………」
花田さんは俺の持つ宝石を見ながら、そう聞いた。

「いや………、わかりませんね。
でも本物なら、放置されているなんて、ありえませんよね」
俺は彼に同意を求めるようにそういった。
「ううん、………呪いの緑色のダイヤなんて、聞いたことがあるけどね………」
花田さんは冗談とも、本気ともとれない感じでそういう。

突然、吉川の悲鳴が轟く。
花田さんと俺は、同時に振り返った。
「どうした………」
吉川を見て取ると、俺はそう聞いてみる。
彼の悲鳴なら、そんなにあわてることは無いと思った。

「や、泰明さん………、壁に………、変なものが………」
彼は壁を指さして、怯えながら俺の問いに答えた。
俺は壁を見たが、何もない。
「吉川、何も無いぞ………」
吉川を見て、俺はそういった。
彼は床に座り込み、まだ怯えたままだ。

「いったい、何が壁にあったというんだ」
河口君は怒ったように、吉川に問いただす。
「緑色の、化け物の影が、映っていたんだ………」
吉川はまだ怯えている。
(緑色の影………、もしかして………)
俺は手の中にある宝石を見た。

しかし特に変わったところはない。
俺はもう一度、月明かりにその宝石をかざした。
確かに壁に光が映ったが、それは化け物の姿にはとうてい見えない。
(気のせいか………)
そして吉川の所に戻ると、彼は立ち上がっていた。

「吉川、気のせいだよ。きっとさっき俺が月明かりに宝石をかざしたとき、その光が反射したんだろ」
俺はそういって、その場を治めようとした。
そして宝石を、元の場所に戻す。

「そろそろ次に行こう」
そういって俺は扉の方に歩き出した。
みんなも俺が歩き出すのを見て取ると、後にしたがう。
そしてその部屋を後にした。

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