晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>2L4

見知らぬタイトルのものばかりだが、神秘・怪奇小説のようだ。
(まさに、今回のドラマぴったりの内容だな………)
そう思いながら、俺はその中の一つを手に取った。
(………………)
切り取られた首を持つ、美女の絵だった。

(キャベリズム美術か………)
ヨーロッパの中世に、そんな美術があったのを思い出した。
聖書の中にある、かなりグロテスクなシーンをモチーフにする分派だ。
このあたりにある書物は、ほとんどキャベリズム美術に関するものだ。

(余程、キャベリズム美術に御執心だったのかな………)
悪趣味だとは思わない。
ただこの屋敷の雰囲気が、その美術の不気味さを引き立てていた。
そのとき突然、男の悲鳴が轟いた。
俺は反射的に振り向く。
(吉川か………)

少し俺はあきれた。
花田さんが、声の方に駆け寄っている。
そして俺も、彼の元に向かった。
みんなの間から、床に尻を付いている吉川の姿が見える。
俺はみんなの横に並んだ。

吉川の前には、何号というのかはわからないが、ポスターサイズぐらいの絵が置いてある。
その絵は切り取られた男の首を傍らに、優雅に酒を飲む美女の姿だった。

「まあ、確かに気持ち悪い絵ですね………」
まじまじとその絵を見て、河口君が他人事のような感想を述べた。
「ヨーロッパの中世に、こんなジャンルの芸術があったと思うよ」
花田さんが、そう口を挟む。

「悪趣味な芸術ですね………」
河口君はしみじみとそういった。
「そろそろ行きましょう」
そしてみんなが一息ついたころで、俺はみんなにそう提案した。
みんなは頷くと、扉に向かって歩き出す。
俺達は部屋を出た。

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