晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>2M4

俺は、右側の本棚を見に行くことにした。
(凄いな………)
あらためてその蔵書の量に実感する。
そんなに詳しいことは、わからないが、それらが並々ならぬものを感じた。
そしてその中の一冊を取る。
(死者を蘇らせる………)

その本は英語で書かれていたので、細かい内容はわからない。
ヨーロッパの一部に語り継がれていた、原始宗教のようだ。
(欧州っていっても、キリスト教だけじゃあないんだな………)
俺はあらためてそう思った。

その本に書かれている地図を見る限りでは、東欧の辺りに位置する。
(社会主義圏には、こういう伝統的なものはあまり残っていないかもしれないな………、もしかするとこの文献は、学術的にかなり重要なものかもしれないな………)

俺は漠然とそう思い、不思議と本の扱いが丁寧になる。
吉川の悲鳴だ。
俺は振り返った。
河口君と吉川が窓の所にいる。
吉川は尻を床に付け、窓を見上げていた。
「どうした河口君………」
俺は河口君のところに駆け寄り、そう聞く。

吉川に聞くより、早いと思った。
「わかりません………、ただいきなり吉川が………」
そういって、河口君は吉川の方を見る。
窓はツタに覆われ、ほとんど窓の外は見えない。
ツタの隙間から、僅かに外が垣間見られるだけだった。

「泰明さん、窓に人の顔が………、人の顔があったんです………」
河口君は窓のところに行く。
「馬鹿なことをいうなよ………、ここは二階だぜ………」
彼は窓の外を確認し終わると、振り返りそういった。
突然、梟の声がした。

辺りには沈黙が走り、みんなの動きが止まっている。
花田さんが沈黙を破った。
「………梟じゃあないか、梟を見間違えたんだよ、きっと………」
少し笑みを浮かべ、彼はそういった。
みんなの中から、笑いが起きた。

「吉川、びくびくしているから、何でも化け物に見えるんだ、ははっ」
河口君は吉川をからかう。
「そろそろ行きましょうか………」
俺はそういった。
そしてみんなは、ゆっくり扉の方に歩みだす。
俺達は部屋を後にした。

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(→全ての部屋を回った場合)