晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>2W4

俺は窓の所へ行った。
そこには花田さんも来ている。
窓からこうこうと、光が差し込んでいた。
(月明かりって、こんなに明るいものだったんだな………)
ネオンに覆われている都会にいたせいか、月明かりがこんなに明るいなんて、気付かずにいたんだ。

俺は花田さんの横に並び、庭を眺めた。
庭には芝が植えられている。
それは、百年間放置されていたとは思えないぐらい、整っている。
(誰かが、手入れをしているんだな………)
俺は明日、洋館について、いろいろ確認しなければと思った。

テラスには、テーブルと椅子が置かれている。
そしてその左右には、ギリシャ神話の女神のような彫刻があった。
いつの間にか、背後に花田さんが来ている。

「泰明君、明日天気が良かったら、あそこでお茶でも飲もうか」
花田さんは俺の方を見ると、微笑みながらそんなことをいう。
(猫か………)
俺は花田さんの方を向いた。
花田さんも驚いたらしく、顔をこわばらせて庭を見つめている。

「花田さん………、花田さん」
彼はゆっくり俺の方を振り向いた。
「いや、驚いたな………、ははははっ」
花田さんはこわばらせた顔を無理矢理動かし、照れ笑いをした。
その時、背後で俺を呼ぶ声がする。

「泰明さん、そろそろ行きましょうよ」
吉川だ。
「ああっ」
俺はそう答えると、花田さんの方を向いた。
「花田さん、行きましょうか」
そういうと、答えを聞く前に扉の方へ歩きだした。

「そうだな………」
背後で花田さんの声がした。
そして扉の方へ歩き出す。
扉のところには、すでに二人がいた。
そして俺達は食堂を出る。

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