晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>3N3

俺達は書斎に入った。
中は気のせいか、さっきより重苦しく感じる。
(早く鍵を探さなければ………)

俺は正面の本棚にいった。
「もしこの部屋で落としたとしたら、この辺りだと思うんだけど………」
本棚の前の床に隈無くライトをあてた。
しかしそのライトの光が、鍵を浮き出させることはなかった。
(落としたのは、この部屋じゃあないのか………)

俺は床に膝を付く。
そして這うような格好をして、鍵を探した。
(無い………)
端から端まで当てても、その光の中に鍵は入らなかった。
(やっぱりないか………)
俺はもう一度だけ探そうと振り返り、唖然とした。

そこには鳥のような影があった。
(なんだ………)
その鳥は影の中に沈み、目だけが爛々と輝いている。
(フクロウが迷い込んだのか………)
俺は事態を見守った。
しかしその影は動かなかった。

突然、誰かのライトの光がその動物に当たる。
その動物は鳥ではなかった。
いや、動物ですらないかもしれない。
俺の体は硬直した。
(ば、化け物なのか………)
体に戦慄が走った。

「泰明さん、どうしたんですか」
河口君の声だ。
みんなのライトが俺の方に向けられ、光が交錯する。
そしてその光が、再びその動物を浮き上がらせようとしたときだ。
その動物は突然、宙を舞った。
(鳥………………)

みんなが、俺のところに駆け寄る。
「鳥が迷い込んでいたんですか………」
河口君は、宙を見上げながらそう呟く。
さっきの化け物は、闇の中をまだ飛び交っている。
部屋の中に、羽音だけが響いていた。

みんなは各々天井を見上げている。
「フクロウか、何かかな………」
花田さんはきょとんとした顔をして、そう呟く。
「そうじゃないですか………、普通の鳥は寝ていますよ」
河口君はどうでもいいことのように、そういった。

(いや………、違う………、あいつは化け物だ………)
俺は心の中で、そう呟いていた。
そしてその羽音は、闇に解けるように消えていった。
「この部屋には、鍵は落ちてないみたいですよ」
河口はそういって、みんなを見回した。

「そうだな、部屋を出よう」
花田さんはそういって、扉の方へ歩き出す。
みんなもそれにつられるように、扉に向かった。
そして俺達はその部屋を後にした。

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(→全ての部屋を回った場合)