晦−つきこもり
>六話目(真田泰明)
>3P4

みんなは各々のところに探しにいった。

俺はさっき見た、暖炉のところにいった。
そこにいくと俺は、ライトの光を床に隈無く当てた。
(ないな………………、んん)
俺は背後に気配を感じて振り返る。
「河口君………、驚かすなよ………」
河口君が、そこに立っていた。

「すいません。俺も暖炉のところが気になったもので………」
彼はそういうと、おもむろに暖炉の中に入る。
「おい、おい、おまえが落としたんじゃあないんだから、中にはないよ」
俺は、またその辺りの床にライトを当てた。

「いや、さっきの骨が、どうしても気になるんですよ」
河口君はさっきより念入りに、調べている。
こんな状況の中で、あきれたことをする奴だと、心の中で苦笑した。
「何もないですね………」
彼は暖炉の中から、そう呟いた。

そして後ずさりして、暖炉を出ようとする。
「痛て!」
河口君は尻を、暖炉の側面にぶつけた。
ぶつかったショックで、暖炉の上の煉瓦の一つがはがれ落ちる。
彼はそのまま暖炉を出た。

「暖炉を壊すなよ………」
俺は少しおかしかった。
彼が暖炉から離れると、また一つ煉瓦が落ちた。
そして次々と煉瓦が崩れ落ちていく。
俺と河口君は、あわてて後ずさりした。
みんなも俺達の周囲にいつの間にか、集まっている。

一同は事態を見守った。
(どうしたんだ、たかがぶつかったぐらいで………)
暖炉の回りの煉瓦という煉瓦が、崩れ落ちていく。
まもなく、一面の煉瓦が全てはがれ落ちた。
辺りには土煙が立っている。
そして周囲の土煙は徐々に晴れていった。

吉川の悲鳴が部屋の中を轟く。
煉瓦が崩れ落ちた裏には、無数のミイラが埋め込まれていた。
(いったい………)
俺達は呆然として、立ちすくむ。
それはミイラを埋め込んだというより、死体が暖炉の熱でミイラ化した、そんな風に感じた。

「いったい………」
河口君はそう呟く。
「嫌だ、早くこんなところ出ましょうよ」
吉川は、もう泣き出しそうな声を出して叫ぶ。
「とにかく屋敷を出ることを考えよう」
俺は扉に向かった。
みんなも俺の後に続く。

そして部屋を出た。

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