晦−つきこもり
>六話目(前田和子)
>A4

そりゃあそうよ。
しかも、やろうとしていたのは、三才の女の子だったんだから。
それを知らずに、おばあちゃんはこう続けたのよね。

「私も願かけがしたいな。どこにお札をおさめればいいの?」
赤い靴の子は、すぐに案内しようとはしなかったの。
なんでかっていうとね。
願かけのお札って、神社で売られていたから、普通はそれを買って、奉納もお金を払ってしていたらしいの。

でも、その子にはそんなお小遣いがなかったから。
お札を納める場所の隅の方に、こっそり手作りのお札をさげていたのよ。
それがいいだせなかったの。
赤い靴の子の表情を見て、おばあちゃんは思ったって。

この子、近くで見るとこんなに暗い顔をしていたのかって。
その子、決してかわいくないわけじゃなかったのよ。
目がぱっちりとして、かわいらしい顔つきをしていたんだけど。
少しも笑わなくて、悲しげな顔をしていたんだって。

おばあちゃんは、赤い靴の子が願かけの方法を教えてくれないのが面白くなくてね。
何度も尋ねたのよ。
でも、その子はずっと教えなかったの。
そんなある日、おばあちゃんは赤い靴の子の後をこっそりつけてね。

お札のありかをつきとめたわけよ。
そう、石段の上にある、お堂の中よ。
それで、赤い靴の子がその場を立ち去った後、こっそり見てみたらね。
沢山の木のお札の中に、いびつな形をした紙きれがあったのよ。

それは、赤い靴の子が作ったお札だったんだけど。
おばあちゃんは、その紙を見ようとして、つい落としてしまったのよ。
その上、怖くなって逃げ出してしまったのよね。
次の日、おばあちゃんは赤い靴の子にそのことを話したの。

変な紙切れがあったけど、あれは何だったんだろうって。
おばあちゃんは、その子の後をつけていったことや、お札を落としたことを自分でばらしてしまったのよ。
三才の子供がすることだもの。
そんなものよね。

二人がその場所に行ってみると、紙のお札はまだ地面の上にあったの。
赤い靴の子は急いでそれを拾って、もとの場所に戻したのよ。
おばあちゃんはそこで初めて、その子から事情を聞いたの。
お金がなくて、手作りのお札を作ったこと。
母親が病気だということ。

おばあちゃんはもう、思い切り謝ったんだけどね。
赤い靴の子は泣きながら、その場を去って行ってしまったの。
それでおばあちゃんは、家の人に頼んで、願かけのお札を二つ買ったのよ。
今度その子に会ったら、一緒に願かけをしようと思って。

……赤い靴の子は、次の日の朝に、又神社に現れたわ。
真っ赤に泣きはらした目をしてね。
おばあちゃんがお札を出して謝ると、こう返事をしたの。
うん、二人で願かけをしよう、って。

おばあちゃんはね、その子のお母さんの病気がよくなるようにって書こうとしたの。
でも、赤い靴の子はいったのよ。
それはしないでいいって。
それでおばあちゃんは、どういう願かけをしたと思う?
1.赤い靴の子のお母さんのこと
2.自分の願いごと