晦−つきこもり
>六話目(山崎哲夫)
>P7

葉子ちゃん、本当に驚いている時って、そんなちゃんとした言葉は出ないもんだよ。
せいぜい、ギャー、なんてのがいいとこだな。
だけど自分は、それすらいえなかったんだ。

んぎゃーっと叫んだつもりが、
「んばーっ!!」
といってしまったんだよ。
すると、突然ヒヤリとした空気が流れた。

首を意味する『ンバ』って言葉を叫ぶことは、決闘開始の合言葉だったんだ。
ンバンバ族達は、次々と顔を見合わせた。

そして、自分を指差しながら、しきりにがやがやし始めたんだ。
ふと見ると、前方にキリンの首のような形をした、高い塔があった。
自分が恐竜だと思っていたのは、その塔だったんだよ。
ンバンバ族は、塔と自分を交互に指しながら、討論を続けたんだ。

初めは、何をいっているんだかわからなかったんだがな。
どうやらンバンバ族は、その塔に自分を連れていこうとしているようだった。
塔の中には、誰か偉い人がいるんだろうと思ったよ。
彼等は、塔に行ってお伺いをたてようとしていたんだ。

自分は、塔まで連れて行かれた。
いいか、葉子ちゃん。
ここからがまた、大変だったんだが……。
塔の中には、カーテン……いや、何重ものベールに包まれた場所があったんだ。

ンバンバ族の一人はその中に入り、なにやらぶつぶついっているようだった。
お伺いをたてていたんだろうな。
自分は、ベールの外で逃げるチャンスを待った。
だが、四方からがっしり捕まれていて、なかなか身動きがとれなかったんだ。

やがて、ベールの中に入った奴が戻ってきて、自分を指してなにかいいだした。
それを聞くと、周りのンバンバ族は雄叫びをあげ、自分をまた別の場所へ連れていったんだ。
自分は、牢のようなところに押し込まれた。

これからどうなるんだろうと思うと、気が気じゃなかったよ。
そして次の日、裁判にかけられたんだ。
どうだい葉子ちゃん、怖いだろう?
1.怖い
2.怖くない
3.おかしい
4.わびしい