晦−つきこもり
>六話目(鈴木由香里)
>AB5

「そんなこと……」
っていいかけて、私はふと考えたの。
今日一日を振り返ると、確かに知らない顔の親戚が何人かいたわ。
ついさっきまでは、あんなに気になってたのに……。
みんなと話しててすっかり忘れちゃってたのね。

そして、私は返事をいい直したの。
「そういえば……」
って。

ね、そういうもんだって。
それに、葉子も『心に残る結婚式』を目指すんなら、いろんな人の結婚式を見て勉強しておかなきゃね。

最近は趣向を凝らした結婚式や披露宴が増えてきてるから、見てて飽きないんだって。
それにしても、この前行ったのは他に比べようがないくらい奇妙な披露宴だったなぁ。
その日は大安吉日の日曜日でさぁ、ポカポカ陽気に恵まれた、絵に描いたような結婚式日和だったんだ。

どこの式場も、結婚式ラッシュだったはずだよ。
私が登録してたバイト先にも、結婚式や披露宴のサクラの依頼がけっこう来てたもん。
そんな中、私が派遣されたのは、ウォーターフロントに建てられたばかりっていう豪華ホテルでの披露宴だったんだ。

芸能人でも『大御所』って呼ばれるような人でなきゃ使えないような、超一流のホテルだよ。
そんな場所を利用できる人っていったら、自然と限られてくるじゃん。
私がホテルに着いた時も、フロントやロビーに人影はなくてさぁ。

ひっそりと、静かで落ち着いた雰囲気をかもし出してたよ。
目につく物っていったら、
『風間家・橋本家 披露宴会場』
って文字と矢印の描かれた看板が立ってるだけだった。
確か新婦の家が橋本だったから……。

ふーん、新郎は風間っていうんだ。
最初の印象はこんなもんだったかな。
矢印はエレベーターへと続き、エレベーターは直通で最上階まで。
エレベーターのドアが開いた時に目の前に広がったのが、大ホールの入り口で……。

ええと……、確か『イボガエルの間』だったと思う。
1.イボガエルだって、笑っちゃう
2.ステキなネーミングね
3.ヤダァ、気持ち悪ーい