晦−つきこもり
>七話目(前田和子)
>A1

「まずは、私と一緒にお堂へ行くのよ。ちょっと待ってて。用意してくるから」
和子おばさんは、そそくさとあかずの間を出ていった。
赤い靴の子へのお参り。
行くなんていってしまったけれど、一体どんなものなのかしら。
残酷なお参りって……。

「でもさあ、私だって、三才の特別なお参りなんてしてないよ。あんな話、真に受けることなかったんじゃない?」
由香里姉さんが、私を見ていった。

「由香里ちゃんは、直接おばあちゃんの血をひいてないだろう?
だからだよ。今ここにいる人達の中で、おばあちゃんの血をひいているのは、俺と、良夫と、葉子ちゃんだけなんだ」
泰明さんが、私の肩をたたく。
……やだ、どきどきしちゃう。

「葉子ネエ、何喜んでるんだよ」
良夫が割り込んで来た。

「ニヤニヤしてる場合じゃないだろ? お参りに行かなきゃならないんだから。
そうだ、葉子ネエ、怖いだろ?
おまじないしてやるよ。ちょっと左手出してみな」
1.出す
2.出さない